液晶から有機ELへの移行が遅れたという指摘もあるが、JDIのフルアクティブなどの液晶技術は、有機ELを上回るメリットも持っている。ハイエンドスマートフォンには有機ELが採用される流れがあるが、一方で成長が鈍化しているのもハイエンドスマートフォン市場である。

 新興国を中心としたミドルからローエンドのスマートフォンという大きな市場の需要を考えるのであれば、既存の安定した技術で、かつ有機ELのようなフレキシビリティを持ったJDIの液晶技術は、これからの市場にマッチした技術かもしれない。しかも、熱に弱い有機ELはまだ車載用には使えず、液晶はこれから伸びる車載事業にも有望だ。ただし、車載事業は長期的な安定供給がもとめられるので、新しい技術を次々にだすより、10年のような長期間同じ部品を供給できるような、安定性と長期の信頼が求められる。

 大手が有機ELに流れるのであれば、逆張りするのも下位企業の手である。液晶でいくのか有機ELにするのかで意思決定がブレたのも、JDIの失敗の一因だったかもしれない。しかし、経路依存的に現状を考えるなら、優れた液晶技術と新しい方式の有機ELの技術を持ったJDIには、技術力の高い中堅パネル企業としてうまく厳しい競争を乗り越えてもらいたい。

「新技術で勝つ」という
ありがちな逃げを打つべからず

 重要なのは、顧客が買うのは技術ではなく商品であり、技術開発だけが答えではないということ。また、経営も技術戦略だけが経営ではなく、あの手この手で収益を確保することが経営者の役割であり、「新技術で勝つ」という、メーカーにありがちな逃げを打たないでほしい。

 既存技術でも儲ける手段がないか徹底的に考えることが、JDIには必要だ。忘れてはいけないのは、韓国サムスン電子が成長したきっかけは、日本が見捨てた白黒テレビという古い技術をインドや中南米などの新興国ビジネスに活かし、大きな利益を得て、それが原資となって半導体を成長させ、液晶パネルを成長させ、スマートフォンを成長させていったという歴史である。

 繰り返しになるが、新しい技術だけが戦略ではない。

(早稲田大学大学院経営管理研究科教授 長内 厚)