関税引き上げの影響は中国より小さいが、米国経済減速に拍車が掛かるのは間違いない。米中首脳会談が不調に終われば、7月のFOMCでの利下げ期待がさらに高まるだろう。
過大債務を抱える中国企業の金利負担を軽減
FRBの利下げは、米国経済だけでなく他国の経済にも影響する。ある市場関係者は「米国よりも貿易摩擦で対立する中国へのメリットが大きい」と指摘する。
それは、リーマンショック後に増大した民間債務、特に企業債務の存在故である。
債務が大きいほど、利下げによる金利負担軽減効果は大きい。米国に比べ中国の企業債務は大きく膨らんでいる。
IMFによると、リーマンショック直後の09年に米国の金融機関を除く企業債務の対GDP比率は70.2%だった。17年時点でも73.2%と微増にとどまった。これに対し、中国は、同期間に103.0%から157.4%にまで膨らんだ。利下げとなれば少なからず保有しているドル建て債務の金利負担が軽くなる。
FRBの利下げは、為替の面でも中国にメリットをもたらす。中国政府としては、人民元安が進み、資本流出が起きた15年夏や16年初めの人民元ショックの再来はなんとしても避けたい。その点で利下げによる対ドルでの人民元安圧力の軽減は好都合だ。
株価動向に敏感なトランプ大統領は、FRBの方針転換により株価が高値を維持し続けることで、対中国への強硬路線を堅持していくことが可能になる。中国も利下げで関税引き上げのショックが緩和される。その意味で、貿易摩擦による経済成長鈍化を回避するための利下げが、さらなる摩擦の激化を招くという皮肉な結果になる公算は小さくない。