「鷗友学園女子」の社会科問題が問いかけること中高一貫138校を分析して判明!入試で出る「時事問題」の早川明夫氏(文教大学)と吉野明氏(鷗友学園女子中学高等学校名誉校長)により開催された無料公開シンポジウム「2024年大学入試に向けて―学習者中心の鷗友・社会の注目問題―」には300人近い親子が集まった

各教科の教員が半年近い期間に検討を重ねて作問する入試問題は、学校からのメッセージであり、最初の授業でもある。どのような学びができるのか、そのヒントにもなっている。「学習者中心」を掲げる鷗友学園女子の社会科の問題を見ながら、そのことを考えてみたい。(ダイヤモンド社教育情報)

学園の理念と思春期の女子を伸ばすための工夫

 鷗友では新入生の席替えが3日に一度ある。周辺の同級生と3~4人の小さなグループをつくりがちな女子だが、シャッフルを繰り返すことで、自分も相手も大切にする自己表現法「アサーション」を身に付けるためのトレーニングになるのだという。中学入試で親の期待に応え、ともすればその通りの自分になろうとする思春期の女子を伸ばすための工夫の1つである。

 言語的な抽象化能力は同年代の男子より優れていても、数理的抽象化能力の発達は遅れ気味という女子の実情を踏まえて、中1の理科は実物に触れる生物のみといった大胆な取り組みもしている。

 思春期の女子を伸ばすためにさまざまな工夫を重ねている鷗友は、東京府立第一高等女学校(現・都立白鷗高等学校・付属中学校)の同窓会「鷗友会」によって設立されている。同校の校長だったが、軍部に批判的で第一高女を追われた市川源三が鷗友学園の初代校長となった。良妻賢母の時代に、「女性である前にまず一人の人間であれ」と教えた市川の後を継いだのは、石川志づだった。内村鑑三のキリスト教、津田梅子の英語教育に触れた石川は、戦時中、工場動員から戻った生徒に英語の授業を行い、「敵性語」で反戦詩などを朗読したという。

 こうした草創期の強烈な体験が学校の理念として伝えられている鷗友では、自立した主権者として平和な社会をつくることが生徒には期待されている。社会の入試問題でも、こうした理念が底流にあるような出題がなされる傾向にあると見ていいだろう。