AIや科学の未来にも、宗教は影響する

 今後、私たちの生活を大きく変えていくといわれている最新テクノロジーも、実は宗教と無縁ではありません。

 AIからゲノム編集、安楽死まで最先端の科学技術の開発には「人間とは何か?」という問いがついて回る以上、これも宗教観によって変わってきます。

 よく知られた例を挙げれば、「全知全能の神が人をつくった」という大前提が刷り込まれているキリスト教徒やイスラム教徒のなかには、神でもない人間が人の形のロボットをつくることに抵抗を感じる人もいます。

 鉄腕アトムからペッパーまで、日本人が「かわいい」というシンプルな理由で人型ロボットをつくり出せたのは、人と神(仏)の距離が近い日本的宗教観が背景にあるからだとも言えますし、「自分は無宗教だ」と考える今日の宗教観が影響しているとも言えます。

 「イスラム教徒は豚を食べない」というトピックばかり注目される傾向がありますが、私たちがごく日常的に接している食文化や食習慣にも、宗教は影響をおよぼしています。少子高齢化にも宗教は関係していますし、こうやって例を挙げていくときりがないほどです。

 教養にも、科学にも宗教が深くかかわっている。これは、次のようにイメージすると、わかりやすいと思います。

 「宗教を軸とした歴史という大地に、政治、経済、社会、文化、科学という様々な花が咲いている」

 それだけに宗教は奥深く、おそらく一生かけて研究してもし尽くせないでしょう。そこで本書では、多忙なビジネスパーソンのために、「ここだけは押さえておきたい」という世界5大宗教に関する必須知識をビジネスの視点からお伝えしていきます。

 教科書的にうまくまとめられた本はたくさんあるので、現在の様々なトピックスと絡めながら読み流すことができる「誰にでも使える本」にしていきたいと考えています。