自民党が存在しているから
日本でポピュリズム政党が台頭しない

 日本で左派・右派のポピュリズム政党が台頭しないのは、自民党という世界最強の「キャッチ・オール・パーティ(包括政党)」が存在しているからだ。いわば何でもありの自民党が、ポピュリズムを吸収し、毒を抜いてしまうからである。

 自民党に吸収されたポピュリストの代表格が、他ならぬ安倍晋三首相ではないだろうか。首相就任前の安倍氏が、フェイスブック等で、憲法や安全保障、教育、歴史認識などについて保守的な言動を繰り返していたことを覚えている人は少なくないだろう。しかし、首相就任後は保守的な「やりたい政策」を後回しにして、国民が望んでいた経済政策を優先し、「アベノミクス」を推進した。

 筆者は「アベノミクス」について、規模が異次元なだけで単なる「バラマキ」だと批判してきた(第163回)。確かに、アベノミクスはポピュリズム的な政策としてスタートした。しかし、その後安倍政権が打ち出してきた政策は、「働き方改革」「女性の社会進出の推進」(第177回)や事実上の移民政策である「改正出入国管理法」(第197回)「教育無償化(第169回・P.3)など、社会民主主義的傾向が強いものばかりだ。

 もちろん、安倍政権は「特定秘密保護法」(第72回)や「安全保障法制」(第115回)「テロ等準備罪(共謀罪)法」(第160回)と、安全保障政策を推進してきた。だが、それらは厳しさを増す国際環境の変化に対応したものである。

 例えば、安保法制は自衛隊の行動をがんじがらめに縛っており、連立与党として自民党にさまざまな条件を付けたということで「公明党の勝利」だといわれたほどだ(第104回)。公平にみて、軍事力や警察力の行使については極めて抑制的なものとなっている。

 何より、安倍首相が「最もやりたい政策」だったはずの「憲法改正」は、「自衛隊」の名前を条文に明記するだけで、実質的にフルスペックの集団的自衛権を行使する「国防軍」の創設を諦める内容だ(第194回・P.4)。首相の悲願は、自民党の中でもみくちゃになった挙句、「骨抜き」になってしまったのではないだろうか。