平日は“海”へ、週末は“湖”へ
――「つながり方」を調整する時代へ

 一般的なビジネスパーソンは、平日を会社で過ごす。そこで自分の素を思うがままに出しているという人は少数派であろう。ビジネス仕様の自分を作り(ビジネス・アイデンティティとでも呼んだらよいだろうか)、社内や社外、多くの人々の中で適応すべく自分を調整する。そうやって平日を乗り切って週末を無事に迎えると、ホッとする。

 そう、その手の適応は、何かと疲れるのだ。やっと迎えた週末、オフの時間。そこでは限りなく素に近い自分でいられる。そこに疲れをもたらすものは何もないし、入れたくない。

 ソーシャルメディアの中で起こっていることも、同じことだ。たくさんの人々がいる場所の中で、ソーシャルメディア・アイデンティティの衣をまとって過ごしていると次第に疲れを覚える。それはまさしく、「平日のビジネスパーソン」のようなものだろう。ならば、ソーシャルメディアにおいても週末のようにホッとできる場所がほしくなる

 では、例としてFacebookという社会の中でそれを実現できるか考えてみよう。

 Facebookの中で、みんなとつながる場所(=投稿とニュースフィード)が平日だとする。一方で、どんな場所に「週末」を求めることができるのであろうか。

 その一つの機能はグループ(※グループ機能の詳細についてはこちらを参照)、すなわち「特定の人とだけ」つながれる場所だ。

 言ってみれば、このグループという場所は、「週末」になり得る場所だ。最低2人以上でグループを作ることができるので(さすがに一人きりになることはできないのだが)、家族や恋人、ごく親しい友達、共通の趣味の集まりなど、気心の知れた人とのみつながれる場所にできる。「秘密のグループ」で設定すれば、参加するメンバー、投稿の中身、グループの存在を丸ごと非公開にできる。

 たとえば、夫婦でグループを(つまり2人だけのグループを)作り、買い物に関するやり取り、録画しておきたいテレビ番組、旅行のチケットの手配状況から、インターネットで見つけた役に立つ情報やおもしろい情報を、互いに共有している人もいる。メールと違い、サイトのURLなどの情報を簡単にクリップできるし、閲覧性にも優れている。履歴もまとめて残しておけるし、必要ではなくなった情報は削除すればよい。

 だが何よりも、そこではソーシャルメディア・アイデンティティの衣に身をまとわなくて済む。承認欲求を満たすのに、何も大勢の人が必要なわけではなく、ごく狭い2人の間であってもそれは満たせることを忘れてはならない

 Facebookの中で、みんなとつながる場所(=投稿とニュースフィード)と特定の人とだけつながれる場所(=グループ)を並行して持つことは、ソーシャルメディア疲れに押しつぶされないための、端的な方法のひとつだ。

 たとえるならば、みんなとつながる場所(=投稿とニュースフィード)は、世界につながる“海”。そして、特定の人とだけつながれる場所(=グループ)は隔離された“湖”。社会生活を営む人間にとって、いくら疲れるからと言っても、100%隔離された世界で生き続けることは難しい。けれども、許容できる疲れにも限度はある。

 だからこそ、重要なのはその「バランス」だ。平日は海で過ごし、週末は湖で過ごす。それは、人間関係にまつわる困難を乗り切るにあたって、現実の社会生活でも、ソーシャルメディアでの「社会」生活でも共通の知恵ではないだろうか。

 

※本連載は毎週金曜日に更新します(全5回予定)。次回最終回「Pinterestに見る、「モノを介したつながりの場」へ向かう人々」の掲載は、7月20日の予定です。