一方、ライバルのグリコは紙パッケージを使用。マーケティング本部の水越由利子氏は、自身の育児経験から「粉ミルクの缶を捨てるのに困った。液体ミルクでは捨てることがストレスにならないようにしたかった」と理由を語る。販売量についても、「当初予測の3倍で推移している」(同氏)と笑顔だ。

 液体ミルクの普及に努める社団法人乳児用液体ミルク研究会の末永恵理氏によれば、既存製品に対して3つの要望が寄せられているという。

 1つ目の要望は、サイズの多様化だ。「既存の2社が販売している製品の中間ぐらいのサイズがあると嬉しい。明治の製品(240ml)は一般の乳児にとって量が多く、お母さんは中身を捨てるのに抵抗がある。一方、グリコの製品(125ml)は小さいと感じる人も多い」(同氏)。

 2つ目は、乳児用乳首が直接つくタイプの製品だ。海外ではすでに発売例があるが、現在日本で流通する商品は、一度容器に移す手間が必要になる。

 3つ目は、アレルギー対応の液体ミルクだ。粉ミルクではアレルギーを持つ乳児でも飲めるタイプが日本でも既に発売されているが、液体ミルクではまだない。日本とデンマークの文化に詳しいコペンハーゲン大学のマリー・ホンジュランド・レスガード准教授によれば、「デンマークでは昔から液体ミルクが普及していた。現在はアレルギーに対応した製品がある」と北欧での事例を語る。

 現状、日本での人工栄養(粉ミルクと液体ミルク)に占める液体ミルクの割合は、明治とグリコを合わせてもわずか4%前後だ。

 18年9月に発生した北海道胆振東部地震では、海外製の液体ミルクが被災地に送付された。しかし、安全性への不安や使用方法が周知されておらず、捨てられてしまった。まず、商品の認知を上げることが必要不可欠となっている。

 現在、国内の液体ミルク市場への参入は2社だけで、競合の粉ミルクメーカーは、「販売を検討している」(森永乳業)、「施策の検討を進めていて、関係省庁への申請に向けて動いている」(雪印メグミルク)。粉ミルクに比べて価格は2~3倍程度と割高で、今後は価格競争も含めて激戦となることが予想される。