上司には伝えるが、部下には伝えない一方的なコミュニケーション

 戦略わかったふりおじさんの問題は、彼らの存在を、「社長や上司」が百パーセント事前に認知するのは難しいことにあります。なぜなら、彼らのコミュニケーションの多くは一方的なものだからです。彼らは、「上司→部下(自分)」のコミュニケーションは積極的に行いますが、反対に「部下→上司(自分)」のコミュニケーションは行いません。

 みなさんの周りにもいらっしゃるのではないでしょうか? イメージでいうと、上司には何も質問はしないのに、部下にはやたらと饒舌な人です。

 彼らは残念なことに、現場から上がってきた質問を上にあげる、という行為はほとんどしません。その結果、現場からの評価を見てみると、「経営陣が思っていた評価と、まったく違う評価」が出てくるケースも多いのです。要は、上からの評価は高いが、実際は下からの評価が低い人が多いのです。

 トーション・オブ・ストラテジーの問題点は、組織のオープネスを構造的に下げ続けてしまうことにあります。なぜなら、現場のメンバーからすると、伝言ゲームでゆがめられた情報が常に伝わっているため、経営陣が言うことと現場で見聞きすることに、必ずズレが生じるからです。
 しかし、その間にいる戦略わかったふりおじさんは「解釈を入れること」に自分の価値を見出すため、ズレが修正されないまま放置されてしまうのです。
 結果的に、現場のメンバーは、「経営陣は噓をついている」「情報がオープンになっていない」と感じてしまう。これは残念ながら、「戦略わかったふりおじさん」がいる限り、一向に改善することはありません。