戦略のねじれを解消する2つの対策

 では、どうすればいいか。対策は2つあります。

 1つめは、情報の種類に応じて「経営陣と現場メンバーとの直接のコミュニケーションを増やすこと」
 数字や目標など「誰がどう解釈しても同じ情報」はレポートラインにのっとって情報を伝達させます。さらに、解釈が発生しえる余地のある情報(ビジョンなど)は、直接のコミュニケーションを行う必要があります。現場の声を直接、実名で吸い上げる機会をもつなども有効です。ねじれは、どうしても伝言ゲームのように人をまたげばまたぐほど発生してしまうからです。

 2つめは「時間差をなくすこと」
 戦略というのは通常、超長期の視点と超短期の視点の組み合わせでできています。超長期とは、5年、10年や30年、100年レベルの時代の変化を読みながら、戦う方向性を決める話のこと。ビジョンのようなものがわかりやすいでしょう。
 一方で、現実には「超短期」の戦術レベルの話を従業員と密に共有できるかもきわめて重要です。ビジネスはリアルタイムで動いていくため、現実的には、事業を取り巻く環境は1週間単位で変わっていくのが当然です。
 たとえば、「事業提携の可能性が急に出てきた」「超大型の案件を受注した(失注した)」「すばらしい新規事業のアイデアが生まれた」「経営クラスのメンバーに退職の可能性が出てきた」「地震や火災などの災害が勃発した」「コンプライアンス違反や重大な問題が発生した」など……。リアルタイムで事業環境は動いていきます。経営陣ができるのは、このリアルタイムの情報をメンバーに伝えるタイムラグを減らすことです。

 戦略のねじれは、完全になくすことはできません。ただ、こうして時間差をなくすことで、戦略の後戻りを防げるので、トーション・オブ・ストラテジーの問題は少しずつ解決していけるはずです。