16万部を突破したデビュー作『転職の思考法』で、「このまま今の会社にいてもいいのか?」というビジネスパーソンのモヤモヤに答えを出し、「転職は悪」という既成概念を打ち破った北野唯我氏。いま、人材マーケット最注目の論客であり、実務家だ。
その北野氏が、今回選んだテーマは、「組織」。発売即重版が決まった、自身初の本格経営書『OPENNESS 職場の「空気」が結果を決める』では「ウチの会社、何かがおかしい?」という誰もが一度は抱いたことがある疑問を科学的、構造的に分析し、鮮やかに答えを出している。
なぜ、あなたの職場は今日も息苦しいのか。具体的に、何をすれば「オープネスが高い」組織がつくれるのか。明日、少しでも楽しく出社するために、一人ひとりができることは何か。本連載では、これらの疑問について、独自の理論とデータから解説する。
「オープネス=自由で開放的」ではない
前回の記事では平成の30年間の間に「時価総額を増やした会社」と「減らした会社」で、組織のオープネス(風通しの良さ)に大きな差があることについて解説しました。
「オープネスが高い=自由で、開放的」という印象をもつ方もいるかもしれませんが、私が言いたいこととは少し違います。
というのも、強い組織の中にはあきらかに「閉鎖的で官僚的な企業」も存在しているからです。
強い組織というのは、一種の宗教なような面をもつことがあります。何百年、何千年と存在し続けている組織は、たとえば宗教団体がそうであるように、しばしば閉鎖的な面をもっています。同様に、強い会社は、独特の風土があることが多い。人が「あの人は、あの会社っぽいね」と言うとき、そこには独特のカルチャーが存在していることを意味しています。
あるいは、地方の小さなコミュニティの中でとても強いつながりをもつ組織もあります。彼らは閉ざされた場所、閉ざされた人間関係の中で長い時間を過ごすことで、強烈なコミットメントを生み出しているのです。
こういう組織の共通点は、エントリーマネジメントに力を入れていることです。エントリーマネジメントとは、入社の時点で「文化との相性」をしっかりとチェックすること。入り口で絞るのです。その文化は世間一般的に言うと、かなり偏った価値観であることがよくあります。よって外部から見ると、宗教っぽく見えるのです。
文化形成も同様です。文化形成とは、その企業にとって「良いとされる行為」と「悪いとされる行為」を浸透させる施策ですが、強い文化をもつ企業は、文化形成のための施策をもっています。
リクルートに代表されるように、四半期や半期に1回など定期的に集まり、何が自社のカルチャーを体現しているのか、どんな行動を善とするかを浸透させていく。これらは外にいる身からすると、やや強烈な組織に見えることがあります。スタートアップの企業の中にも同様の習慣を踏襲している企業は多くあります。
重要なのは、そういった組織は、中で働く人にとって「悪い会社ではない」ことです。むしろ、従業員はチームに対して愛着をもっていることが大半です。好きな人・気の合う友人と働く時間が長い=従業員の満足度も高い傾向にあるわけです。