深い呼吸は体の内側をダイナミックにストレッチする
このとき、実は非常に多くの筋肉が動員されています。
横隔膜をはじめ、僧帽筋(背中の中央から鎖骨の外側あたりまで広がっている筋肉)、胸鎖乳突筋(首の側面を斜めに通る帯状の筋肉)、腹直筋(腹部の前面にある筋肉)、外腹斜筋(腹部の側面の表層にある筋肉)、内腹斜筋(外腹斜筋よりも深い層にある筋肉)、腹横筋(内腹斜筋に覆われてる筋肉)、外肋間筋(肋骨と肋骨の間にある筋肉。肋骨を持ち上げて胸郭を広げ、肺に息を吸い込む働きを助ける)、内肋間筋(外肋間筋の裏側にある筋肉。肋骨を引き下げることで胸郭を狭め、息を吐き出す働きを補助する)……など。
特に横隔膜は、呼吸筋の中でも非常に大きな役割を果たしています。横隔膜は、膜という名前がついていますが、ドーム状の筋肉で、胴体のほぼ中央・胸郭の下に位置しています。息を吐くとき、横隔膜は上がり、胸郭を圧迫して肺の空気を押し出します。反対に、息を吸うと、横隔膜は下がり、それに伴って胸郭の容積が大きくなって、肺に空気をたっぷり取り込むことができます。
このように、上半身の広い範囲で筋肉が動員されており、これらが連携することで、上下左右・前後にわたる胸郭の3Dの動きを作り上げています。
ですから、深い呼吸をすることは、単に酸素と二酸化炭素を出し入れするだけではなく、体の内側をダイナミックにストレッチすることにもなるのです。
湯船につかって呼吸をするということは、水圧を押しのけながら、呼吸筋を動かすことになります。だから、呼吸筋を効率よく鍛えることができます。
呼吸筋が鍛えられれば、日常生活を送る上でも呼吸がしやすくなるので、階段を上っただけで息切れしたり、小走りしたときにゼーゼーしたりすることがなくなります。酸素の巡りがよくなるので、結果的に自律神経のバランスをさらに高めることにもなるでしょう。