自宅でコーヒーを淹れるために、豆を買うようになったら欲しいのがグラインダーだ。でもグラインダーは高価なものが多く、失敗したくない。値段の差はどこで生まれるのか?そもそもグラインダーによって味はどう変わるのか?世界中で様々な商品開発に参加するトップ・バリスタは「グラインダーは安かろう、悪かろう」だと断言するが、その理由とは?

テレビで話題沸騰!日本人唯一のワールド・バリスタ・チャンピオンである井崎英典氏の著書『ワールド・バリスタ・チャンピオンが教える 世界一美味しいコーヒーの淹れ方』から、その内容の一部を紹介する(撮影:京嶋良太)。

「粒度」が濃度を変える

コーヒー豆は、豆のままでは抽出することができません。抽出するには、コーヒー豆を粉砕する作業、すなわち「挽く」という作業が必要とされます。

適切な粒度を知ることが抽出にとって重要な理由は、コーヒー豆は挽くことで初めて、その成分がお湯へと移行するからです。コーヒー豆を挽くことで、一粒の豆が粉々に粉砕され、ミクロン単位の粒子となります。

すなわち、コーヒー豆を挽く作業とは、表面積を増やす作業であり、お湯と粉が触れる面積を増やすことで、コーヒーは初めて効率的に抽出されます。

同じ抽出条件で抽出した場合、より細かくすれば液体の濃度は上昇し、粗くすれば液体の濃度は下がります。細かくすればするほどコーヒー豆の表面積が大きくなり、より容易に成分がお湯に溶け出しやすくなります。逆に粗くすればするほど表面積は小さくなり、成分が溶け出しにくくなります。

濃度が粒度によって影響を受けるとするならば、味わいも粒度によって大きく変わると考えることができます。細かすぎると濃度が高くなりすぎてエグ味が出たり(=過抽出)、粗すぎると濃度が低すぎて水っぽく(=未抽出)なります。

コーヒーの抽出において、粒度は非常に重要な役割を果たしています。コーヒーの抽出において最も重要と言える「濃度」を決める要因になるからです。

中には、湯量や粉量を変えて濃度を調整する方法も存在しますが、個人的にはおすすめしません。なぜなら、湯量と粉量には「適切な比率」が存在し、その範囲を大幅に超えて湯量と粉量を変えると、過抽出や未抽出につながりかねません。

湯量と粉量を変えて濃度をコントロールする前に、まずは粒度を変えることで濃度を調整しましょう。

したがって、抽出の質を判断する上で、適正な粒度の設定がその8割を占めていると思っていただいて構いません。粒度を基準に自分好みの適切な濃度を設定しましょう。

粒度が均一な、家庭用電動グラインダーの最高峰であるカリタの「NEXT G」

抽出の命「グラインダー」

コーヒーを豆で購入した際に必要になるのがグラインダーです。グラインダー次第でコーヒーの味わいは劇的に変わります。なぜなら、刃の形状、刃の材質、コーティング、回転数(RPM)などの要素が、粒度を大きく変えるからです。

グラインダーによって挽き出された粉の粒度はすべて同じではありません。肉眼でもわかりますが、よく観察していただくと、大きい粉があったり、小さい粉があったりと、粒度には幅があります。

専門の検査にかけるとその違いがミクロン単位でわかるのですが、その幅のことを「粒度分布」と呼びます。粒度分布とは、粉を挽いた際に生じる大小の粒子が、全体量を100%と考えた際にどれくらいの頻度で発生しているか、をグラフで示す指標です。

現状の「素晴らしいグラインダー」とは、挽き出される粉の粒度分布が狭いグラインダーを指します。

世界トップのバリスタも競技会で使用する、世界最高峰の手挽きミル「Comandante C40」

なぜ粒度分布が狭い方が良いかと言うと、豆から粉にした際に、粒度分布の幅が広いグラインダーより、大きな粉と小さな粉のばらつきを最小限に抑えることができるからです。

そしてばらつきを最小限に抑えることで、抽出に理想的な粒度の割合を増やし、その表面積を多く確保することができるからです。

狙った粒度に比べて大きい粒度が多い場合は「未抽出」を引き起こしやすく、狙った粒度に比べて小さい粒度が多い場合は「過抽出」を引き起こしやすい、と考えてください。

「中挽き」といっても、ボロボロのプロペラグラインダーの中挽きと、数万円する電動フラットグラインダーの中挽きでは、“言葉”は同じでもその結果はまったく異なります。

【プロペラグラインダー】
大きな粒度、小さな粒度共に多い=「粒度分布が広い」グラインダー
狙った中挽きの粒度が「低い割合」で含まれる

【数万円する業務用電動フラットグラインダー】
大きな粒度、小さな粒度共に少ない=「粒度分布が狭い」グラインダー

中挽きの粒度が狙い通り「高い割合」で含まれるよって、抽出効率だけではなく、味わいにおいても両者で大きな差が出ます。

裏を返せば、コーヒー店と自宅の味わいは、抽出技術以前に、どれだけ良いグラインダーを持っているか、ということも大きな差です。はっきり申し上げますが、グラインダーは「安かろう、悪かろう」だと覚えておいてください。

コーヒーは非常にシンプルな飲み物です。水とコーヒー豆だけなのですが、グラインダーが生み出す粒度分布の差が、味わいに劇的な差をもたらします。

良いグラインダーを買うことが美味しいコーヒーへの第一歩です。ですので、ぜひグラインダーには惜しまず投資をしていただければと思います。