一方、プレミア価格のFIT電源では、この調整措置が基本的に認められていない。「発電事業者は十分もうかったのだし配慮は不要」という経産省の意図が見え隠れし、太陽光発電事業者、特に影響の大きいメガソーラー事業者が不公平感を抱いているのだ。

 これまで具体的な負担総額は明らかではなかったが、今回、OCB資料によって全貌が見えてきた。

 まず経産省の資料では、現状では発電側基本料金で負担する1kW当たりの単価は月150円、年1800円程度と試算されている。

 また、今回対象となる12~14年度の太陽光のプレミア案件は、経産省の資料を基にOCB資料では既稼働案件33.39GW、未稼働案件22.1GWと推定されている。

 これらのデータを基に計算すると、既稼働案件だけで33.39GW×1800円/kW=年間601億円。ここから10年間事業を続けると仮定して約6000億円の負担、また未稼働案件は22.1GW×1800円/kW×10年間=約4000億円の負担が増える。

 つまり、既稼働案件と未稼働案件の総額で約1兆円の負担増につながるというのがOCB資料で示された試算という訳だ。

 たしかにプレミア価格によって太陽光発電バブルを生み出し、多くの事業者が潤ったのは間違いない。だから事業者側も、発電側基本料金の導入に反対している訳ではない。しかし、彼らにとって今回の「プレミア価格を調整措置から外す」という措置は、国策で事後的に負担が増えて収益性が落ちるというデメリットしかない。

 そこで事業者側は、経産省に「プレミア価格を調整措置から外すことの見直しを求める」という“新たな調整措置”を要望しており、そこが攻防戦の最終防衛線となっているという訳だ。

対日投資にも影響が出るのか
国際仲裁で損害賠償の可能性も

 なおOCB資料では、他にも以下のような問題点が指摘されている。

 ■日本政府が関与する制度への信頼を毀損し、対日投資全体に影響が出る
 プレミア価格を調整措置から外すというのは、「もうかっている」からという理由だけ。リスクの高い初期に太陽光発電に投資したのが、たまたまもうかったからといって、そのもうけをかすめ取る制度を後から導入する国は信用を失うのではないか。