傘下でコンビニエンスストアを運営するミニストップの藤本明裕社長でさえ「事前に何も知らされていなかった。何もわかりません。何も聞かないでください」と驚きを隠せなかった突然の交代発表だった。質疑応答でも岡田社長は、自身の退任を決めた理由や発表のタイミングについて問われた際に、「タイミングに意味はない」「(社長に)なった時から次にはそう(退任することに)なる」などと、答えをはぐらかすかのような言いぶりも目立った。「肩の荷が下りたような感じなのか。心境は?」と聞かれても、その質問には答えなかった。

 なぜ、こうも不機嫌なのか。ある小売業界関係者は、「岡田社長は十数年前から辞意を周囲に漏らしていたが、後任がなかなか見つからず、辞めるに辞められなかった」との見方を示す。

 例えば、現イオンリテール会長の岡崎双一氏は一時期、岡田社長の後継とみなされていた。イオンの課題は、祖業であり、8兆円を超える連結売上高の3~4割を占めながらも超低収益にさいなまれる総合スーパー事業の立て直しだ。イオンリテール社長に2015年に就任した岡崎氏はその期待を背負ったが、果たせなかった。

 19年3月1日付で、岡崎氏と、ショッピングセンターを運営するイオンモール社長の吉田氏、そしてイオン傘下のユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスの藤田元宏氏の3人がそろってイオン本体の副社長に昇格。前出とは別の小売業界関係者は、「形の上では岡崎氏も昇格した格好だが、これで事実上、吉田氏が“ポスト岡田”となる路線が固まった」と見ていた。吉田氏がデジタル事業担当を兼務となったことも、岡田社長の期待の強さをうかがわせた。

後継はイオンモールを担当
中国事業の黒字化を実現

 岡田社長は吉田副社長について、イオンモールでの経験を評価。「長期的な市場の変化と採算を予測して多額の投資をし、着実に仕事を仕上げていく」と褒めたたえた。赤字が続いた中国事業も、19年2月期に黒字化し14億円の営業利益を計上した。