満を持して就任が決まった吉田副社長。デジタル事業について、「特に強化したい。リアルとオンラインをどうやって融合していくか、社内で人材を集め、チームを作って対応する」と方針を説明し、長年の課題であるGMSの立て直しについては、「お客様のニーズと、現場の商品やサービスとの間にギャップがある。お客様の店になるように是正していく」と述べた。

傘下の事業会社で40代の若手を登用
ジュニアへの“大政奉還”の地ならしか

 では、30代半ばの“岡田ジュニア”こと岡田社長の長男・尚也氏の去就はどうなるのか。岡田社長はかつて、「世襲のメリットはない。創業者一族による世襲は自分限りで終わらせる」と断言していた。だが、この日は過去の発言に触れながらも、「そういうサクセッション(後継者育成)プランに私がいるのかどうかわからない。本人がどう考えるかもわからないので、答えようがない」と述べ、事実上の軌道修正を図った。

 尚也氏は外資系金融機関を経て15年にイオンに入社。フランス発祥のオーガニック食品スーパー、ビオセボンと合弁で設立したビオセボン・ジャポンの東京・中目黒の2号店が18年4月にオープンした際には店長を務めていたが、その約1年後の19年3月にはビオセボン・ジャポンの社長に一気に昇格した。

 近年、イオン傘下の事業会社では、40代の若手社長の誕生や幹部への登用が増えており、「40代でトップに立てるよう、尚也氏のイオン社長就任への地ならし」(前出の小売業界関係者)ともいわれる。急速なデジタル化という外部環境と、GMSの立て直しという長年の課題、そして創業家への大政奉還という将来に向けて、吉田次期社長の双肩にかかる期待の大きさは決して小さくない。