一方で、23年間トップを務めた自身や現在のイオンについて、「事業機会のチャンスの浪費癖があり、逃してしまう。決めない、踏み込まない、リスクを取らない傾向が強くなっていた」と、厳しく批判した。具体的にどのようなチャンスを逃したのかについては回答を避けた。ただ、衆目が一致するのはやはり、デジタル戦略の出遅れであろう。

 イオンは18年、米国で食品や日用品を扱うスタートアップ企業のボックスドに出資。またデジタル事業の研究開発拠点を中国・上海にオープンさせた。さらに19年にはイギリスのネットスーパーのオカドと提携した。ただ、目立った成果が上がっているとはいいがたい。例えば、オカドのノウハウを生かしたネットスーパーの売上高目標は、2030年に6000億円と遠い将来を見据えている。

 祖業のGMSが低収益に悩む中、イオンがグループの収益源として開拓してきたのが、イオンモールによるディベロッパー事業と、銀行やクレジットカードといった総合金融事業だ(下図)。

イオン23年ぶりの社長交代発表、岡田現社長は将来の「世襲」に含み

「大黒柱に車をつけよ」が岡田家の家訓。収益源の多様化は正しい手法なのだが、かといって多くの消費者の生活を支えるGMS事業からは容易に撤退できない。アマゾンなどデジタルの巨人が小売業に侵食するが、後継者も育たず、「決めない、踏み込まない、リスクを取らない」(岡田社長)社風が蔓延していたとすれば、その焦りはどれほどのものであったろう。