アクティビストらが
ホワイトナイトになるのか
24日時点のPBR(株価純資産倍率)は建設が0.89倍、道路が1.49倍。1倍未満の企業は、アクティビスト(物言う株主)の標的になりやすい。道路も昨年には1倍未満だった時期があり、昨年5月に香港の投資ファンドであるオアシス・インベストメンツII・マスター・ファンド・リミテッドやその関連会社が道路株の買い増しを行い、一時はオアシスグループ全体で道路株の4%程度まで保有していたとみられる。
今回のTOBでは、建設と道路が互いの交渉カードとしてアクティビストの脅威を利用した可能性がある。実際、道路は反対表明文書の中で、「道路の株式を保有すると語ったアクティビストと建設が面談し、そのアクティビスト投資家が道路株式のTOBを行う可能性を察知したため、アクティビストリスクを排除するために建設がTOBを実施したいと説明した」旨を記している。
では、道路が建設をけん制すべく、アクティビストなど他者と手を組む可能性はあるのか。
道路の今枝良三社長は、メディアの取材に対し、TOBへの対抗策の選択肢として、友好的な第三者であるホワイトナイト(白馬の騎士)探しなどを考えていると明かした。建設の幹部らは「ホワイトナイトが見つかっていれば、それは戦略なのだから言わないはず」と、これに動じていない。
建設とTOBの買付者である前田総合インフラ(建設の完全子会社)は、20日時点で道路の株式を24.68%取得しているが、これを3月4日までに最大51%まで買い増しする計画だ。
株式の保有割合を高めることで、共同でのデジタル化戦略を推進するほか、11年以降にアスファルト合材の販売価格引き上げを談合したとして独占禁止法の違反が判明した道路のガバナンス体制の見直しに深く関与する狙いを示している。また、建設が従来から注力している公共インフラの包括管理やPPP(官民連携)・コンセッション(民営化)分野でシナジーを創出することを目指している。
道路は、有利子負債がなく、現預金と有価証券が合計994億円(19年3月期時点)もあるキャッシュリッチ企業だ。もともと設備投資が少ない事業内容が中心で、時世も売り上げ増加に味方している。インフラ老朽化に伴い、アスファルト合材販売の需要は底堅い。道路は先の反対表明の中で、「直近5事業年度における営業利益率は約10.34%であり、同期間における前田建設の営業利益率である約5.46%を大きく上回る数値」と述べている。
ただ、道路の豊富なキャッシュの活用方法は、株主還元や自社株買いが目立つ。これに対して、「脱請負業」を目指す建設は歯がゆさを感じているようだ。