日本でも進む「格差」「分断」
関 この本にはダイバーシティやインクルージョンも含めたイギリスの階層社会の現実が書かれていますが、日本でも所得格差がそのまま教育格差になってきていることを痛感しています。
もちろん昔から、お金持ちはいい教育を受けていたとは思いますが、我々が生まれ育った昭和の高度成長期はもっと公教育が充実していましたし、学費も安かったですよね。いま、日本のGDPに占める教育費の割合は先進国で最低です。
一方で世帯収入の統計を見ると、所得の格差がこの20年くらいでものすごく広がってきたのは明らかで、世帯所得の中央値がどんどん低くなっています。
いま、日本は中央値が400万をちょっと超えるくらい。一方で大学の学費って、私立だと最低でも年間で100万円ほどはかかるので、大学に通わせるってことは本当に難しい。学費の安い国公立大学に入るにはそれなりの学力が必要なので、そこにも所得格差による教育格差の問題が起きています。そして、教育格差は所得格差を固定させ、さらに広げるという悪循環につながります。
ブレイディ この本から、そうして日本の社会問題にまでつなげて考えていただけるのは本当にありがたいです。ほかにも、登場人物に共感した、親目線で読んだなど、多様な読まれ方までしているのは、自分としてはとても驚きです。
私自身はこの本を書いたときは、EU離脱に絡んで、改めて多様性の問題が浮き彫りになり、分断しているイギリス社会のことを考えていました。たまたま面白い学校に通う中学生を育てている親と、中学生とその友だちを通して、そうした社会をありのままに伝えられたらいいな、と。この本を通じて、イギリスのリアルな「いま」を垣間見てもらえたら嬉しいなと思います。