東大医学部卒の医者ママである森田麻里子医師は、自身の息子が毎日6時間寝ぐずりを続ける日々が続いたそうです。そこで睡眠に関する医学研究を徹底的に調査し、1本のメソッドにまとめて実践したところ、なんと息子が3日で即寝体質に!
そんな夢のような寝かしつけの方法を徹底的にわかりやすくまとめた新刊『医者が教える赤ちゃん快眠メソッド』には、夜泣きに悩むご家庭なら必ず知っておきたい知識が満載です。「寝かしつけが手厚すぎると逆に夜泣きが増える」といった意外な事実から、「保育園での多すぎるお昼寝、少なすぎるお昼寝への対処法」「最適な寝かしつけタイミングがわかる8つのサイン」といったすぐに使えるノウハウまで網羅。そんな本書の中から、一部を特別に無料で公開します。

赤ちゃんの頃に睡眠が足りないと<br />将来太りやすくなるPhoto: Adobe Stock

3歳のときに睡眠不足だった子どもは
中学生になったとき肥満が多い

 実は、赤ちゃんや子どものときに睡眠不足だと、将来肥満になったりするなど、悪影響が出やすいことがわかっています

 たとえば、915人の赤ちゃんを2歳まで追跡して調べた2008年のハーバード大学の研究では、睡眠時間が一日合計12時間未満だと、12時間以上の子どもに比べて、3歳になったときに1.7倍肥満が多いことがわかりました(*1)。

 また、富山県の子ども約8000人を調べた2002年の富山大学の研究では、3歳のときに夜の睡眠時間が9時間未満だと、11時間以上の子どもに比べて1.4倍肥満が多いことがわかりました(*2)。同じ子どもたちを追跡した別の研究では、3歳のときに睡眠が少ないと、中学1年生になったときの肥満も多いことがわかっています(*3)。

 とはいえ、「うちの子は早く寝かしつけようとしても寝つかないし、朝も早起きして元気に遊んでいるから、そんなに長く眠るなんて考えられない」と思った方もいるでしょう。

 たしかに、ある調査結果によると、2~6歳の子どものうち、夜の睡眠時間が8~9時間程度の子どもが6%ほどいるようです(*4)。しかしその子どもたちが本当に8~9時間の睡眠で十分なのか、それとも眠いのに眠れていなかっただけなのかはわかりません。いずれにしろ、90%以上の子どもは、もっと多くの睡眠時間が必要なのです。

 赤ちゃんは眠くなったらすやすや眠るもの、というイメージがあるかもしれません。確かに7~8割の子どもはよく眠り、夜泣きで悩まされることもありません。

 しかし、残りの2~3割の子どもは寝つくのが上手ではないので、本当は眠いのになかなか寝つかないことが多いのです。そして「夜泣きや寝ぐずりをするから睡眠時間が足りなくなる」→「睡眠不足が原因で興奮したり不機嫌になったりする」→「さらに夜泣きや寝ぐずりをする」という悪循環に入ってしまうのです。

 まずは朝6~7時に起こすことから始めて、生活リズムを整えましょう。そのうえで睡眠時間を確保して、このループから抜け出すことが大切です。

*1 Taveras EM, Rifas-Shiman SL, Oken E, Gunderson EP, Gillman MW (2008) Short sleep duration in infancy and risk of childhood overweight, Arch Pediatr Adolesc Med, 162(4): 305-11.
アメリカの915人の赤ちゃんの親を対象に、生後6カ月、1歳、2歳時点でアンケート調査を行った観察研究。2歳までの平均睡眠時間が一日合計12時間未満だと、12時間以上の子どもに比べて約1.7倍、3歳時点での肥満が多い。
*2 Sekine M, Yamagami T, Hamanishi S, Handa K, Saito T, Nanri S, Kawaminami K, Tokui N, Yoshida K, Kagamimori S (2002) Parental obesity, lifestyle factors and obesity in preschool children: results of the Toyama Birth Cohort study, J Epidemiol; 12(1): 33-9.
富山大学の関根道和教授らのグループが行った、3歳時点での子どもの生活習慣と肥満についての観察研究。平成元年度に富山県で生まれた子約8000人を対象にアンケート調査を行った。肥満の割合は、夜の睡眠時間が9時間未満のグループで10.5%だったのに対し、11時間以上のグループでは7.4%だった。
*3 関根道和、山上孝司、鏡森定信「富山出生コホート研究からみた小児の生活習慣と肥満」『日本小児循環器学会雑誌』2008年第24巻第5号、pp.589-97
富山大学の関根道和教授らのグループによる、平成元年度に富山県で生まれた子約1万人を追跡した、一連の観察研究をまとめた論文。3歳の時点で夜の睡眠時間が9時間未満のグループは、11時間以上のグループと比べて、小学校4年生になった時の肥満が多かった(オッズ比1.50)。中学校1年生時点での肥満についても同様に、睡眠時間が短いグループで多かった(オッズ比1.59)。
*4 Touchette E, Petit D, Seguin JR, Boivin M, Tremblay RE, Montplaisir JY (2007) Associations between sleep duration patterns and behavioral/cognitive functioning at school entry, Sleep; 30(9): 1213-9.
カナダの1492人の子どもについて、2歳半、3歳半、4歳、5歳、6歳時点での夜の睡眠時間を調査した観察研究。その結果、夜の睡眠時間はずっと8~9時間程度の子、途中から長くなる子、ずっと10時間程度の子、ずっと11時間程度の子の4パターンに分けられた。8~9時間程度の短い睡眠がずっと続く子は全体の6%だった。