連載10回目でお話ししたように、医療費控除を申請して確定申告を行うと、自営業者だけでなく、会社員やパートタイマー、年金受給者も納める税金が少なくなって、場合によっては還付金を受け取ることができます。医療費控除の適用範囲は意外に広く、妊娠・出産費用や介護保険のサービス利用料、市販薬の購入代金も、条件付きながら該当します。大人気の確定申告マニュアル『いちばんわかりやすい確定申告の書き方』の監修・土屋裕昭税理士が申請のポイントを解説します。

市販薬、介護、お産も<br />確定申告でお金が戻る対象です!Photo: Adobe Stock

妊娠・出産費用には控除対象に「なる」ものと「ならない」ものがある

 ほかの医療費と同様に、妊娠・出産費用も医療費控除の対象に「なる」ものと「ならない」ものがあります。妊娠中の定期検診や検査費用は控除が認められますが、妊娠と診断される前の費用は認められません。交通費については、通院のための費用は控除対象ですが、実家に帰って出産するための旅費は対象外です。主だったもの図表にまとめてあります。

 また、医療費の支払い後に、健康保険から支払われた出産育児一時金は「補てん金」という扱いになり、使った医療費から差し引いて医療費控除額を計算しなければなりません。一方、出産のために会社を休んだ場合に支給される出産手当金は、医療費から差し引く必要はありません。産休中の生活費を支えるために必要な費用として認められるからです。

 医療費控除の具体的な計算方法や申請に必要な書類等については、第10回を参照してください。ほかの医療費と合算して、1月1日から12月31日までの1年間に、10万円以上の医療費を支払っていた人は医療費控除を受けられます。合算する人すなわち確定申告を行う人は、本人もしくは夫でも構いません。

 なお、年またぎで出産した人はその年にかかった費用(=支払日)のみが対象となります。前記した出産育児一時金や出産手当金についても、受け取った日によって対象となる年度が違ってきます。