立場上、どうしても言えなかったこと
岩瀬 ライフネット生命時代は、立場上言えないこともたくさんありました。強制はできません。だから、個人として感じていることを、著書や個人ブログに書いたりしていました。「朝30分早く出社して新聞を読もう」といったメッセージもそうです。
「毎朝、定時より30分前にきっちりした身なりで出社し、新聞を読んでなさい。簡単なことだが、もしこれを1年間、1日も欠かさず続けることができれば、1年後には皆さんの社内における信頼は確実に高まっていることだろう」(岩瀬大輔氏ブログより)
これをメディアに取り上げられてしまい、「ブラック企業だ」だと揶揄されてしまいました。
田端 30分前に、ですか。率直に言って、僕はプロフェッショナルとしてあるべき姿だと思います。
岩瀬 もう少しリアルな説明をすると、朝9時始業で、いつも30分前に来て黙って新聞を読んでいる若手社員がいたとします。その若手が最年少部長に昇進したら、同じことを、ディシプリン(訓練)を持って繰り返すことができる気がしました。イメージ戦略ではなく、心のあり方として、です。
田端 『これからの会社員の教科書』も、独立したから書けたことがたくさんあるんです。例えば、『これからの会社員の教科書』に、プロは勝負どころで休まない。血を吐いてでも現場に行け、といった内容を書いたんですけど、これ、平日昼間のオフィスでは言えません。SNSで言いたいことを言っている印象を世間から持たれている僕も、上場企業の執行役員という立場上、言えないことがたくさんありました。
部下を持つ方には、『入社1年目の教科書』『これからの会社員の教科書』をご自身の「代弁者」として活用していただけたらと思いますね。言いにくいことを僕らがビジッと言っていますので。「これ、いい本だから読んどいたら?」と部下にシレッと渡しておく(笑)。本であれば、「業務命令」とは誰も思わないですから。
岩瀬 でも、伝えたいことをやんわり伝えられる。
田端 そう。岩瀬さんの「朝30分早く出社して新聞を読め」も、ディベートメイキングとしてはすごくいいなと思っています。