立場上、どうしても言えなかったこと

田端信太郎さん田端信太郎(たばた・しんたろう) 1975年石川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。NTTデータを経てリクルートへ。2005年、ライブドア入社、ライブドア事件を経て執行役員メディア事業部長に就任し、ライブドア事件後の経営再生をリード。2010年からコンデナスト・デジタルでカントリーマネージャーに就任。2012年NHN Japan(現LINE)執行役員に就任。その後、上級執行役員法人ビジネス担当として広告事業の責任者となり、2018年2月末にZOZO前澤友作社長(当時)の招聘でLINEを退社し、株式会社ZOZO執行役員コミュニケーションデザイン室長に就任。2019年12月末に退任。現在は、株式会社レバレッジのマーケティング戦略顧問やオンラインサロン「田端大学」の塾長を務める。著者は『これからの会社員の教科書』(SBクリエイティブ)、『ブランドになれ!』(幻冬舎)、『MEDIA MAKERS』(宣伝会議)など。

岩瀬 ライフネット生命時代は、立場上言えないこともたくさんありました。強制はできません。だから、個人として感じていることを、著書や個人ブログに書いたりしていました。「朝30分早く出社して新聞を読もう」といったメッセージもそうです。

「毎朝、定時より30分前にきっちりした身なりで出社し、新聞を読んでなさい。簡単なことだが、もしこれを1年間、1日も欠かさず続けることができれば、1年後には皆さんの社内における信頼は確実に高まっていることだろう」(岩瀬大輔氏ブログより)

これをメディアに取り上げられてしまい、「ブラック企業だ」だと揶揄されてしまいました。

田端 30分前に、ですか。率直に言って、僕はプロフェッショナルとしてあるべき姿だと思います。

岩瀬 もう少しリアルな説明をすると、朝9時始業で、いつも30分前に来て黙って新聞を読んでいる若手社員がいたとします。その若手が最年少部長に昇進したら、同じことを、ディシプリン(訓練)を持って繰り返すことができる気がしました。イメージ戦略ではなく、心のあり方として、です。

田端 『これからの会社員の教科書』も、独立したから書けたことがたくさんあるんです。例えば、『これからの会社員の教科書』に、プロは勝負どころで休まない。血を吐いてでも現場に行け、といった内容を書いたんですけど、これ、平日昼間のオフィスでは言えません。SNSで言いたいことを言っている印象を世間から持たれている僕も、上場企業の執行役員という立場上、言えないことがたくさんありました。
部下を持つ方には、『入社1年目の教科書』『これからの会社員の教科書』をご自身の「代弁者」として活用していただけたらと思いますね。言いにくいことを僕らがビジッと言っていますので。「これ、いい本だから読んどいたら?」と部下にシレッと渡しておく(笑)。本であれば、「業務命令」とは誰も思わないですから。

岩瀬 でも、伝えたいことをやんわり伝えられる。

田端 そう。岩瀬さんの「朝30分早く出社して新聞を読め」も、ディベートメイキングとしてはすごくいいなと思っています。