「iPhoneなど流行る訳がない」と言われていた2008年
小林:朝倉さんと村上さんは、この20年間で印象的に記憶に残っていることはありますか?
朝倉:私の場合は当時、当事者だったということもあり、やはり2013年にリリースした『モンスト』の大ヒットでしょうか。
小林:なるほど。朝倉さんがまさにミクシィのCEOだったときのことですよね。
朝倉:はい。そのお膳立てとして、ソーシャルゲーム事業において、ミクシィとDeNAで業務提携をし、ゲームの開発基盤を共通化しました。
小林:ありましたね。
朝倉:ただ、個人的な体験としては、2008年のスマートフォンの登場が印象に残っています。2008年はiPhone3Gが日本で初めて発売された年です。私はその年の夏に3Gを購入したんですが、当時在籍していたマッキンゼーの中でも、普段使いでスマートフォンを使用している人は私だけだったと思います。
当時はまだまだガラケー全盛期だったのですね。当時社内に200人程のコンサルタントがいたのですが、私が唯一で、同僚から「研究用ではなくiPhoneを日常で使っているのか?」と珍しがられた覚えがあります。当時のiPhoneは、そもそもキーボードのキータッチが極めて打ちづらかったり、画面を触れてもリアクションが悪かったりしました。
あとはとにかくアプリを起動するとすぐに落ちたんですよね。メーラーを立ち上げたら落ちる、といったことが普通に起きて、日常使いするには忍耐力を要しました。ただ、それ以上に「OSがアップデートされ続けるってすごい!」、「アプリって楽しい!」、「クラウドって便利!」といったことは普段使いすることで実体感しましたし、大きな可能性があると感じていました。
そこから1年程経って、2009年あたりから徐々にゲームアプリを目にするようになったように記憶しています。ちょっとしたサッカーゲームやレーシングゲームのようなものが少しずつ出始めて、それらで遊んでいたのをよく覚えています。今からだと想像がつきませんが、当時は「日本ではiPhoneは流行るわけがない」などと言われていましたからね。
小林:日本のガラケー自体が高性能だったこともあり、そう言われていましたよね。当時、ガラケーゲーム市場では何が流行っていたかというと、「怪盗ロワイヤル」が発表されたのが2009年です。その頃がガラケーゲーム市場の全盛期の始まりだったので、当時「ガラケーじゃなくスマホだ!」と言うと、「君、何を言っているの?」とでも言われてしまうような雰囲気でしたよね。
そのくらい、日本のガラケーゲーム市場は隆盛を極めていました。一方、グローバルで見ると、当時は「スマホかガラケーか」という論争よりも「PCかモバイルか」という論争が主でした。
今となってはもう遠い記憶ですが、“Farm Ville”や“City Ville”、“Mafia Wars”などのゲームが代表作のZynga(ジンガ。米国のソーシャルネットゲーム企業)というプレイヤーがおり、当時のFacebookはゲームプラットフォームと言っても過言ではない程、タイムラインではジンガのゲームの通知が飛び交っていました。そういった時代のことを考えると、Facebook自体も非常に大きな変遷を遂げたことが分かります。