自己肯定感の低い人は、自身を”過大評価”している

──では、最近、若者世代の間で頻繁に聞く「自己肯定感が低い」という悩み。どのようにしたら解消できると思いますか? もしくは、何から手を付けたら良いでしょう?

岡崎:本の中では、法論和尚(韓国の著名な仏教僧)のこんな言葉が引用されていましたよね。

「自尊感が低い人たちは、自身を過大評価し、素晴らしい人間だという幻想を持っている。この幻想と現実のギャップが大きいほど、悩みも大きくなる。自分はこんなに立派なはずなのに、現実の自分は惨めで取り柄もなく、認められてもいない。こうして今の自分の姿に不満がつのり、次第に憎らしく、見るのも嫌になっていく」

 もしかすると、SNSを見ているうちに「自分はもっとこうなりたい」「こうなれるはずなのに」みたいな欲求がどんどん大きくなって、それに追いつけない自分を嫌いになってしまうのかもしれません。人と比べて落ち込んでも無駄、と頭ではわかっていても、なかなか考え方を変えるのは難しいですよね。でも、この本のハ・ワンさんが書いた言葉を心に残しておくと、少しずつ考え方を変えていけるように思います。

なぜこの本は、劣等感にさいなまれる韓国人の心を救えたのか?<br />

──たしかに、実際に「本を読んで変わった!」という人もたくさんいますもんね。

岡崎:1月に発売してから半年くらい経ちますが、20代の方から共感の声をいただくことも多くて。「張り詰めていた心が和らぐのを感じました」とか、「今まで何かと人と比べて、悩んでいたのに、この本はあなたらしく生きればそれでいいと、今の自分を肯定してくれたように思えました」とか。

 いろいろなレビューを見ていると、この本はけっこう人によって感じるポイントがバラバラなんです。それこそ就職活動で悩んでいる人は仕事に関する項目に引っ掛かったり。ほかにも、対人関係に悩んでいる人はこの項目、結婚で悩んでいる人はこの項目、というふうに、いろんな共感ポイントがあるんですよね。たぶんそれだけ、悩みの種類が多様化してきているんだと思います。それぞれの読者が、それぞれの悩みの答えを、この本から見出しているんですよね。

 これからも、そういう悩みを抱えている人たちに、もっともっと届いてほしいですね。どこかしら、共感できる部分があると思います。

――――――――――――――――――――――――――――

 今回の記事で紹介した本書の魅力は、ほんの一部に過ぎない。本書は目次だけでも、ぐっと目を奪われる言葉たちが並ぶ。

・「人生マニュアル」を捨てて自分らしく
・ほかの選択肢はないという「執着」
・人生に「正解」を求めすぎたばっかりに
・そこまで深刻に生きるものじゃない
・「何もしない」とは、究極の贅沢
・“自分だけの人生”は失敗の上に成り立つ
・その「生きづらさ」は、あなたのせいじゃない
・理想通りじゃない「現状を愛する」


 もしも何かピンとくるものがあったのなら、それはあなたが今、手に取るべきタイミングだというサインなのかもしれない。

【大好評連載】
第1回 モヤモヤ働く私の霧を晴らしてくれた一冊の韓国エッセイ
第2回 なぜこの本は、劣等感にさいなまれる韓国人の心を救えたのか?
第3回 意識低い系エッセイが教えてくれた「自分らしい働き方」
第4回 なぜ、韓国人は同じ店を隣に出すのか?

なぜこの本は、劣等感にさいなまれる韓国人の心を救えたのか?<br />