コミュニケーションの巧拙は株価にも影響するのか

朝倉:上場企業の場合も、そういった差が、株価などの側面で表れますね。

村上:理論上はマーケットが良いときでも、コミュニケーションの差が株価の差として表れるはずですが、やはり差が出る度合いは小さいと思います。環境が良いときはモノは売れやすい。モノが売れるので、収益構造やユニットエコノミクス(顧客単位の採算性)がそれほど効率の良い状態でなくても、利益は出るわけですね。

利益が出て見た目が成長していれば、そこまで入念にIRコミュニケーションをしなくても、高く評価され、投資家にもそれなりの株価で買ってもらえる。ですが、マーケット環境が悪くなると、モノが売れづらくなる。

売上が上がりづらい状況下においては、経営者は、投資家から「なぜあなたの会社はサステイナブルに成長できるのか?」、あるいは「なぜターンアラウンドできるのか?」について、よりシビアに問われます。

そうすると、外部環境が厳しい局面でも戦略を練って経営してきた経営者や、その中で実績を出してきた経営者と、マーケットの追い風を自身の実力だと過信してしまっていた経営者では、当然差が出ます。

マーケットがクラッシュしかけているときは、こういった差が株価に如実に表れます。株価チャートで、今までは同じような動きをしていたのに、ある程度株価がステイしている会社と、下がっている会社に分かれはじめているのは、そういったところの差なのだと思います。

小林:上場企業であれば、会社の経営状況を数字で説明するということは、従来も当然やってきたことだと思います。しかし、村上さんが言うように、マーケットが追い風の時は、説明の巧拙や深浅が株価に表れづらい。

一方で、マーケットが悪化し、売上・利益といった基本指標やキャッシュフローが悪化したときには、数字の背景に常に強固な戦略を持って取り組んできたか、そうした思想をしっかり伝えてきた会社なのかどうかが問われます。

総合して考えると、やはり、投資家コミュニケーションをしっかりと行う会社のほうがより評価されやすいということなのだと思います。