あらゆる産業が限界に来ているので、
そこのギャップを埋めるところにマーケットがある(田所)

年齢は関係なし。起業家として成功できるかを分ける3つのポイント田所雅之(たどころ・まさゆき)
1978年生まれ。大学を卒業後、外資系のコンサルティングファームに入社し、経営戦略コンサルティングなどに従事。独立後は、日本で企業向け研修会社と経営コンサルティング会社、エドテック(教育技術)のスタートアップの3社、米国でECプラットフォームのスタートアップを起業し、シリコンバレーで活動する。日本に帰国後、米国シリコンバレーのベンチャーキャピタルのベンチャーパートナーを務めた。日本とシリコンバレーのスタートアップ数社の戦略アドバイザーやボードメンバーを務めながら、事業創造会社ブルー・マーリン・パートナーズのCSO(最高戦略責任者)、ウェブマーケティング会社ベーシックのCSOも務める。2017年、スタートアップの支援会社ユニコーンファームを設立、代表取締役社長に就任。著書に『起業の科学』(日経BP)、『御社の新規 事業はなぜ失敗するのか?』(光文社新書)がある。

田所 この前、パークシャテクノロジーの決算資料を見て思ったんですけど、徳重さんと今同じことを言っていて、要は労働人口がこれからどんどん減っていくと。例えば、橋だとかインフラにいる人はどんどん減っていきます。一方で、地震とか天災が多発していて、求められる要件は上がっていくと。要は、ここにニーズとシーズのギャップがあって、それがいわゆるドローンとかAIとかRPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)でギャップが埋められるみたいな。生産労働人口は減っていく一方で、いかにして技術でレバレッジかけるか、というところですよね。これが2000何十年か、40年か50年か分からないですが、ここはけっこうギャップが空いている状況かなと。

徳重 その通りですね。

田所 そもそも考えてみたら、産業用ロボット、ファナックとかあの辺も、第二次産業の人が減ってきたんで、そこで産業用ロボットが生まれたという背景があるじゃないですか。たぶん、今は40年前と同じような状況なのかなと。ただ、それがべつに自動車産業だけではなくて、徳重さんがやられている業界のように、あらゆる産業が限界に来ているので、そこのギャップを埋めるところにマーケットがあるみたいな感じですよね。

斎藤 僕はシンプルに、日本を変えるのって、構造的には二つかなと思っています。ひとつは、徳重さんがずっとおっしゃっているような、この20年ちょっとでできたGAFAなどの会社が時価総額のトップ10に入っている突出した会社が出てくるかどうか。それらの会社がなぜトップ10入ったかというと、やっぱり1990年代からスタンフォード大学を出たトップ級の人たちが起業家になったからだと思います。日本では全然そうじゃなかったんですけど、ここ数年は、トップ・オブ・トップの人が起業するようになってきたのは事実だと。

田所 そうですね。そっちから来てますよね。

斎藤 なので、次の20年後、2040年に時価総額、過半数をスタートアップで占められるかっていうのが僕の使命だと思うんですね。これが一つ目です。二つ目は、大企業のトップの人たちがみんな既存事業出身だから、新規事業とかに本気で張りきれないんですよ。これを変えるのは、もうシンプルで、イノベーションとか新規事業出身の人たちが最低4割以上、社長になれるような社会をつくらなきゃいけないと思います。

田所 4割ですね。

斎藤 いちばん分かりやすい変革は、今、僕は30代の大企業の社長を300人つくるって言って、どんどんつくってきたんですけど、社長、子会社をやって成功した人が100人成功したら、そこから1000人、1万人と任されるようになって、経営者として勝ち残った人が社長になる仕組みが出来上がっていく。そこさえ変えられれば、日本の大企業ってガラッと変わるわけですよね。例えばローソンの新浪さんとか、35歳から社長をやっています。ちゃんとリーダーとしてやっているじゃないですか。それで、30代社長を増やすと何がいいかというと、ここで社長をやった人が、たぶん一定割合でどんどん起業していくわけですよ。そうすると起業家の層も増えるし、こっちから社長も出てくる。とにかく、大企業内の30代社長、20~30代社長、これをめちゃめちゃ増やすっていうのが、たぶん今の日本に対するアプローチで僕は正しいと思います。

田所 そのために、デロイトでは、何をやってるんですか?

斎藤 大企業の社内新規事業制度とかをいろんな大企業とやっています。どんどん30代社長を輩出しているんですよ。これで300人ぐらい出せば、そのうちの30人ぐらいは大企業の社長になるだろうし、たぶん何十人も起業する人が出てくる。