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日本人はロジカルに話すのが苦手なのか、論理的思考やコミュニケーションにまつわる本がよくランキングにお目見えする。実際、日本語の曖昧で間接的な表現のまま英語に置き換えようとすると、わけのわからない文章になってしまうことも多い。理路整然と発言するには、特に、接続詞の使い方に気を付ける必要がある。
米国の大学やハーバード・ビジネス・スクールで学び、総合商社で丁々発止のビジネスを行ってきた経験を踏まえて、現在、日本人の英語力向上とグローバル・リーダーの育成に携わる著者が、最新作『グローバル・モード』から抜粋してそのコツを紹介する。

接続詞を避け、一文を短くする

 日本語でのコミュニケーションは、高文脈文化のなかでもとりわけ曖昧で間接的表現が多いと言われています。また日本語の構造上、主語がなくても通じてしまう。

 例えば、「撤退はやむをえない」という文章。私がそう思っているのか、状況からそう判断するのが合理的なのか、会社としての意思なのか。こうした曖昧さは日本のビジネスで多用されています。

 しかし、いざ英語で発言しようとすると、「I think we should...」(→私の考えとしては)なのか、「Our company believes...」(→当社の考えとしては)なのか、「It’s reasonable to...」(→合理的には)なのか、主語を明らかにしなければなりません。

 他に気をつけるべき点としては、文章をなるべく短い一文にまとめることです。例えば、接続詞は英語では「and」や「but」など、順接なのか逆接なのか機能が明確であり、その機能に沿わない文章を一文に混ぜ込むことはできません。

 しかし日本語では、「~なのですが~で」「~し、~して」などと、順接でも逆接でもない、並列でもない、レベル感の違う文章を簡単につなぎ合わせてしまうことができるため、つい長文化を招くのです。

 さらに、日本語の構造も長文化を助長します。動詞が最後に来るために、途中で様々な情報を盛り込みすぎても、聞き手は最後まで聞かざるをえないのです。

 例えば、「昨日朝起きたらおなかが痛くて、会社に遅刻して行こうと思ったけど、買い置きの薬を飲んだらよくなるかと思い試しに2粒飲んでみたら意外と効いたのだが、結局大事を取って会社を休んだ」という長ったらしい文章では、日本語として通用しても、結局何が言いたいのか、会社に行ったのか行かなかったのか、最後まで聞かないとわかりません。

 ところが、英語は違います。動詞は主語の直後にきます。結論を先に言ってしまうのです。先程の文章も英文にすると、「I didn’t go to the office yesterday.」(→昨日はオフィスに行かなかった)から始まります。とっておきの情報である「動詞」を早々に吐き出すのです。関係代名詞や接続詞を置いて文章を長くしても、相手が最後まで聞いてくれるかわかりません。

 悪いことに、文章が長くなると、論理構造があやふやになる可能性も増大します。特に日本語は論理性に対して大らかなところがあり、「私の専攻は数学だが、物理は得意だ」という文章を見ても違和感がないかもしれません。

 しかし、「数学が専攻にもかかわらず物理も得意だ」と逆説的にも受け取れるし、「数学が得意なのはさておき」と因果関係のない単なる情報を並列しているだけとも受け取れます。日本語の「が」という言葉が便利すぎて、安易に使ってしまうのです。英文に変える際は、順接、並列、逆接を明確にしなければなりません。

 I majored in math, but I’m also good at Physics.
 →数学専攻にもかかわらず物理が得意(数学と物理が両方得意なことがあたかも不思議というニュアンス) 
 I majored in math. Also, I’m good at Physics.
 →数学も物理も得意(2つの教科の得意不得意は独立しているニュアンス )
 I majored in math. So, I’m also good at Physics.
 →数学を専攻していたから物理も得意(数学を専攻していたことと物理が得意なことに直接の因果関係がある )

 また、日本語では接続詞を多用して、文書をずるずると伸ばすことができてしまうという点も、英語に訳す際の困惑の元となります。

「A社の業績はこの数年かんばしくなったが、昨年末に他社から引き抜いたB氏の尽力で新たな戦略を打ち出すことができ、また、かねてより打ってきたPR戦略が功を奏し、大方のアナリストの予想では今期は大きく沈むようにも思われたものの……」

 結論を最後に回す起承転結型の日本の文章では、これでも構わないかもしれませんが、グローバル環境ではわかりにくさを助長します。