コロナで教育の何が変わるのか?――2つの大きな変化

――一方で、新型コロナウイルス感染症の影響で、学校は授業や行事の開催すらおぼつかない状況が続いています。新型コロナ後の教育はどうなるとお考えですか。

 大きく2つあると考えています。一つは、大学が変わるということです。

 大学の機能は主に、授業というコンテンツを通じた教育機能、その人が在学している、または卒業したという認証機能、そして研究機能の3つがあります。

 新型コロナによって、授業のオンライン化が進み、世界中あらゆる授業がオンラインで開かれるようになっています。それまでも授業を開放する動きはありましたが、今後はより世界の優れたコンテンツにアクセスできる機会が増えることでしょう。

 AIを学ぶなら米国や中国、サーキュラエコノミーを学ぶならコスタリカなどと、意欲さえあれば世界の授業を選択することができるようになる。すると、特定の大学で4年間学ぶというビジネスモデルが壊れていく。

 消費者の目線でいえば、多額の授業料を納めて4年間通わずとも、より充実した授業を割安で受けられる機会が拡大している、ともいえます。

――確かに各先生の授業が特定の大学から離れて、アンバンドルされてきている印象を受けます。

 ええ、そうですね。企業によっては、特にIT業界はそうですが、どこかの大学を出るというよりも、特定の単位を積み上げることで、それがスキルとして評価される時代にあり、実際に就職にも結びついています。

 大学の認証機能にまで影響が及びつつあるのです。大学教育が世界の大学から目的に応じて学ぶスタイルに進化すると、この影響は初等、中等教育にも及んでくると思います。

――もう一つの変化とは何でしょうか。

 子どもの心のケアがますます重要になるということです。

 情報化が進み、何でも検索できるようになると、子どもは、無限の選択肢があると錯覚してしまいます。世界がより身近に感じられる一方で、過剰な情報量、過度な競争に心のバランスを崩す子も少なくありません。米国ではコロナ以降、特に子どもの心のケアの必要性が叫ばれています。

 このような社会で必要なのは、手触り感のある教育ではないかと思います。多くのプロジェクト型学習を実施する学校を見てきましたが、芸術や文化活動を通じて、心が豊かな子が多く育っているのも特徴的でした。

 たとえば、タブレット端末でAIを搭載したような教材を使って学習を続けると、確かに学習効率はよいのですが、幼い子どもにとっては、抽象的すぎる嫌いがあります。本来は、プロジェクト等を通じて、年齢に応じてだんだんと具体から抽象へと向かう教育が望ましいと思います。

 マサチューセッツ工科大学(MIT)の故シーモア・パパート教授は「構築主義」という独創的な学習理論を提案しました。簡単にいえば、実際に何かをつくりながら、学んでいくというアプローチです。

 トップ校の中には、この考えを取り入れ、レーザーカッターや3Dプリンターなどを備えたメーカースペースをつくるところも出始めています。先ほど申し上げた、Learn by Creationの取り組みも、「『創る』から学ぶ」というコンセプトで行っています。

 何より、何か没頭できる制作や活動によって、余計な情報に振り回されずに済む時間を持てるようになり、心の健康も保てると思います。コロナの影響により、マインドフルな教育もこれからもっと求められるでしょう。