スタートアップが成長の過程で対峙する問いの一つに、「利益創出を優先すべきか、成長を優先すべきか」があります。半ば神学論争にも陥りがちなこの問いを要素分解することで、利益と成長のバランスの取れた経営を実現する方法を考えます。

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「利益か成長か」を考える4つの視点

朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉2020年3月、ソフトバンクグループ(以下、SBG)は最大4.5兆円の資産を売却し、それを原資に自社株買いや負債の返済を行う方針を発表しました。

SBGは全般的に成長性を重視する会社という印象がありますが、2019年秋にはWeWorkの一件もあってか、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの出資先に対して収益性とガバナンスを求める旨が報じられています。

従前の主張内容を踏まえると、「成長性から収益性への方向転換」と言っても差し支えないと思いますが、こうした経緯を踏まえ、スタートアップは利益を優先すべきなのか、成長を優先すべきなのかという問いについて考えてみたいと思います。

小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):「利益か成長か」という問いは、過去から何度も繰り返し議論されてきたテーマです。

村上:これは非常に難しい問いだと思います。単純な二項対立と捉えて、どちらか一方を善だと決められる話ではありませんし、もう一段階、分解して考えてみる必要があります。

「利益か成長か」を議論する際に、目安になるポイントが4つあると思います。1つ目が、最終的に「Winner Takes All」、勝者が独占的地位を獲得することが可能なマーケットかどうか。2つ目が、市場規模が大きいかどうか。成長性が持続的に期待できるのかという視点。TAM(Total Addressable Market:実現可能な最大の市場規模)の話ですね。

3つ目が、スイッチングコストの高さ。一度市場を獲得しきった後にそれを維持できるのかどうかという視点。そして4つ目が、見込まれる収益性。市場を獲得しきったとして、利益が出る構造なのかという問題です。