自分たちのMVVを体現/言語化した「クレド」を考える

会社がスケールするタイミングで、<br />ミッション、ビジョン、バリューに<br />整合性があるかをチェックする田所雅之(たどころ・まさゆき)
株式会社ユニコーンファーム 代表取締役社長
1978年生まれ。大学を卒業後、外資系のコンサルティングファームに入社し、経営戦略コンサルティングなどに従事。独立後は、日本で企業向け研修会社と経営コンサルティング会社、エドテック(教育技術)のスタートアップの3社、米国でECプラットフォームのスタートアップを起業し、シリコンバレーで活動する。日本に帰国後、米国シリコンバレーのベンチャーキャピタルのベンチャーパートナーを務めた。日本とシリコンバレーのスタートアップ数社の戦略アドバイザーやボードメンバーを務めながら、ウェブマーケティング会社ベーシックのCSOも務める。2017年、スタートアップの支援会社ユニコーンファームを設立、代表取締役社長に就任。著書に『起業の科学』(日経BP)、『御社の新規 事業はなぜ失敗するのか?』(光文社新書)、『起業大全』(ダイヤモンド社)がある。

 ここでザ・リッツ・カールトン・ホテルのクレドを例に挙げたい。

 クレドとは、企業が大切にしている信条やポリシーのことだ。ミッション、ビジョン、バリュー(MVV)のうち、日々の行動指針であるバリューに近い。

 リッツ・カールトンのクレドは、それによって顧客にもたらす体験や経験を明確にし、「ここに泊まるのは、意味がある」と思わせてくれる。

 クレド
 リッツ・カールトンはお客様への心のこもったおもてなしと快適さを提供することをもっとも大切な使命とこころえています。
 私たちは、お客様に心あたたまる、くつろいだ、そして洗練された雰囲気を常にお楽しみいただくために最高のパーソナル・サービスと施設を提供することをお約束します。
 リッツ・カールトンでお客様が経験されるもの、それは、感覚を満たすここちよさ、満ち足りた幸福感そしてお客様が言葉にされない願望やニーズをも先読みしておこたえするサービスの心です。

 リッツ・カールトンに泊まれば感覚を満たす心地よさ、満ち足りた幸福感という体験ができる。顧客は、単に機能的なホテルという「モノ(サービス)」を買うのではなく、意味を見出せるホテルだから泊まりたい、その空間を体験したいと思う。価値ある「経験」に満足した顧客は、またリッツ・カールトンに宿泊したいと思う。

 数あるホテルの中で、リッツ・カールトンを継続して利用してもらう。こうしてホテルと顧客の関係性を地道に築いていくことこそが、競合他社との差別化を図ること、さらにはLTV(ライフ・タイム・バリュー)が高くなることにつながっていく。

 以上、MVVについて述べてきたが、これも、実際に浸透して、実務上使われなければ意味がない。つまり、メンバーが行動を起こすとき、意思決定をするときの問いかけとして、

 「ミッションに基づいているか」
 「ビジョンに近づいているか?」
 「バリューに即しているか?」

 ということを、常に念頭におくことが重要になる。

 つまり、自分のWHYと会社のWHYを常にそろえていく必要があるのだ。

 1on1ミーティングなどを通じて、普段から、メンバーに対して、「こういうビジョンがあるけど、あなたは、どうしたいか? どう行動するのか?」という問いかけを継続していくことが、鍵になる。