地方エリートの没落 地銀・地方紙・百貨店#3
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地方銀行が地方で絶大な人気を誇る就職先であり、安定職種だったのも今は昔の話だ。経営統合や採用抑制を経て従業員数は減少。全国地銀の「地域雇用力」は著しく低下した。特集『地方エリートの没落 地銀・地方紙・百貨店』(全13回)の#3では、「地域雇用力」減少ランキングと共に、地方経済を左右し得るエリートたちのメッキが剥がれかかっている様子を伝える。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)

コロナ禍で復権も「安定業神話」は崩壊
不人気業種になった地銀の苦難

 今年はちょっと違うぞ――。ある大手地方銀行の人事担当者は、新卒採用に明らかな手応えを感じていた。

 近年、構造不況業種のレッテルを貼られていた銀行業界は、学生の採用戦線で大苦戦していた。新卒採用サイトをオープンしても、「登録してくれる大学生の数が前年比の6割にとどまった」(中部地方の地銀幹部)といった惨状が全国的に散見されていた。

 もはや不人気業種になりかけていた銀行だが、前出の人事担当者は、今年は「見直されている」と実感する。その根底にあるのが、新型コロナウイルスの感染拡大という危機の襲来だ。

 コロナ禍はあらゆる産業を直撃した。人の移動が制限されたことにより、とりわけ多大な被害を受けているのが航空業界や旅行業界だ。長年、これらの業界の企業は「就職人気企業ランキング」で上位に入っていたが、ANA(全日本空輸)やJAL(日本航空)が2020年度の採用活動を中止するなど、就活生への影響は計り知れない。

 片や銀行といえば、コロナ禍で資金繰りに苦しむ企業が続出する中で、融資という保守本流の銀行サービスに対するニーズが高まっている。特に打撃を受けている全国の中小企業に対して、地銀は積極的に支援の手を差し伸べていた。要するに、いわば復権と“敵失”の合わせ技で、新卒採用戦線における地銀株の人気は回復傾向にあるというわけだ。

 だが、長期的な目線で振り返れば、地銀の立ち位置は大きく変容している。かつて、地元の大学出身者の就職先や東京の大学に進学した人のUターン就職先として、県庁や電力会社などと並んで「地元の就職先ではナンバーワン」(地銀OB)の扱いをされていた地銀だったが、今や見る影もない。

 その最たる理由は、あらゆる銀行のビジネスモデルが地盤沈下して、安定業種という神話が崩壊したことにある。銀行の三大業務といえば、融資と預金、そして口座振り込みなどの為替だが、どれも暗たんとした話題しかないのが現状だ。

 融資業務では、コロナ禍で資金需要が降って湧いたが、それ以前は資金需要の減少や金利低下により、収益性は悪化していた。為替業務は、「コンビニ振り込みが誕生して以来、口座引き落とし件数とそれに伴う手数料は激減」(関東地方の地銀OB)した。今後も、LINE Payなどのキャッシュレスでの安価な送金手段が人気を博せば、さらなる収益低下は否めない。結果として銀行が手を出し始めているのが、一定期間利用がない口座から「口座管理手数料」を取るといったかたちで預金業務の稼ぎを少しでも増やすことだった。

 こうした環境下において、地銀はどれだけ地方の就職先としての存在感を保てているのだろうか。地銀の「地域雇用力」の趨勢を推し量るために、ダイヤモンド編集部では、有価証券報告書に記載された地銀の従業員数と平均年間給与の二つに着目して、ランキングを作成した。

 具体的には、従業員数と平均年収を掛け合わせた金額を「地域雇用力」とし、アベノミクスにより雇用環境が改善し始めた時期とされる14年3月期と直近の20年3月期でそれぞれ算出。地銀の地域雇用力の増減を見るために上記2期を比較し、地域雇用力の減少額が大きい順にランキングした。

 では、そのランキングの結果を次ページから見ていこう。