スタートアップの資金調達には多くの場合、複数の投資家が参加しており、ラウンドを取りまとめるリードインベスターが存在します。なぜリードインベスターは必要なのでしょうか。その役割について触れながら、スタートアップにとってのリードインベスターの意義、ベンチャー投資の構造について考えます。

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資金調達ラウンドにおけるリードインベスターの役割と影響力

朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):今回は「リードインベスター」の意味とその役割について考えたいと思います。スタートアップが資金調達をする場合、同じラウンドで複数の投資家から資金を調達するケースが多いわけですが、そうした投資家はリードインベスターと、フォロワーに大別されます。

この点、コーラルキャピタルのブログ記事にリードインベスターに関する3つの特徴が挙げられています。

まず、多くの場合、リードインベスターはその資金調達ラウンドにおける最大の出資者であること。次に、そのラウンドの投資契約条件や必要な事務手続きをまとめるサポートを行うこと。

そして3つ目の特徴として、リードインベスターは、その会社が次の投資ラウンドに進む際、最も手を貸してくれる存在になるということが述べられています。前提として押さえておきたいリードインベスターの定義、役割はこんなところでしょうね。

小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):そうですね。結果的に、リードインベスターの存在が、スタートアップそのものや資金調達ラウンド全体の信用力を高めることにもなります。信頼感のある投資家が責任を持ってラウンドをリードしたかどうかが、スタートアップの信用力にも大きな影響を及ぼすことになるからですね。

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):そうした意味で重要なのは、リードインベスターとの交渉、対話で決まった投資契約条件が、その資金調達ラウンドの基準になっていくという点です。会社にとってリードインベスターは、こうしたラウンドの基準を決める上でのカウンターパートとなります。

また、フォロワーは、リードインベスターが誰なのか、どのような交渉をしているのか、を見極めて追随します。交渉をリードする意味でも、また当該ラウンドに参加する他の投資家をリードする意味でも、「リードインベスター」と呼ばれるということですね。

朝倉:以前のシニフィ談「投資家から見たスタートアップのバリュエーションにおける留意点」で、我々は3つのポイントを示しました。

1点目は、誰の評価に基づくバリュエーションなのか。2点目は、バリュエーションが事業の本質的な価値に基づいているかどうか。3点目は、根拠のある妥当な事業計画に基づいた値付けかどうか。この内、1点目は特にリードインベスターの役割と密接に関連する観点だと思います。

ラウンドへの参加を検討する投資家は当然、「今回のリードインベスターは誰なのか?もう決まっているのか?」「前回ラウンドのリードインベスターは誰だったのか?」といった要素を気にします。もしもリードインベスターが、業務提携によるバリューアップなどを視野に入れた事業会社などの場合、事業連携に向けた意図を反映したバリュエーションは高くなりがちです。

そのスタートアップ単体の価値として、ラウンドにおけるバリュエーションが本当にフェアな評価によるものなのか、フォロワーとなる投資家は、より慎重に見極める必要が出てきます。

2点目の「バリュエーションが事業の本質的な価値に基づいているかどうか」、3点目の「根拠のある妥当な事業計画に基づいた値付けかどうか」といったポイントを判断する上でも、リードインベスターの目利き力に対する信用が問われます。