――それはかなり辛い状況ですね……。親の「教育」が裏目に出て、二次障害につながってしまうケースもあると聞きました。
借金玉 はい。『発達障害サバイバルガイド』には「うつ」の章も入っているのですが、発達障害者のうち、多くの人が二次障害で悩んでいます。僕も小学校時代に発症した双極性障害とは25年の付き合いです。最近はうつがひどくて、「過眠」と「不眠」の症状が交互に襲ってきます。この取材場所に来る直前まで布団から起き上がれず、100時間くらい眠っていました。
発達障害は生まれつきだから仕方ないけど、せめて二次障害がなければ……と思うことは多いです。親が子を「適応させよう」とがんばった副作用としての二次障害の恐ろしさについては、ぜひ、多くの人に知ってほしいと思います。
学校生活はいずれ終わって、君は自由になる
――過去の自分、そして同じ立場の発達障害の子どもたちに伝えたいことはありますか?
借金玉 子どもというのはとても辛い立場です。自分の生活を自分で変えていくことが非常に難しい。使えるお金もモノもスペースもあるいは時間も……すべてが限られているし、いつも「ちゃんとやれ」と叱るおっかない人が近くにいる。僕も「もう一度子どもをやれ」と言われたら怖くて泣き出してしまうでしょう。
そんな僕から発達障害に苦しんでいる子どもたちに伝えたいことは2つ。
ひとつは「学校に行かなくていいから、勉強はしよう」ということ。勉強は生きていくうえで最低限必要な武器なので、「読み書き」「そろばん」のどちらかだけでも、身につけておいた方がいいです。
もうひとつは、「もっとズルしていい」ということ。これは、できないことを無理してやらないためのひとつの考え方です。たとえば僕は小学生時代、教科書を2冊買って、1冊は学校に「置き勉」していました。当然バレて先生に怒られましたが、それでもやめなかった。「忘れ物をしないように気をつけよう!」と何度心に誓ってもダメだった僕なりの、ささやかな工夫でした。
学校というのは「ちゃんとやれる子」のためにあります。毎日遅刻せずに通学して、授業を集中して聞いて、きちんとノートを取り提出物を出す。そういう子が「正しい」とされます。
でも、大人の世界で「みんなと同じようにちゃんとやる」人は、実は大した大人じゃありません。だって、それじゃ「みんなと同じ」程度の結果しか出ないですから。誰よりも上手なズルのやり方を見つけてずば抜けた結果を出すのが、「すごい大人」です。
学校生活はいずれ終わって、子どもだった君は自由になります。何を目指し、何を求め、何をするか、すべてを自分で決められる。そのとき「みんなと同じようにちゃんとやる」ことに、何の価値もないことに気づくと思います。普通であることよりも、生きていくことのほうが重要です。今はとても辛いと思いますが、そのことを忘れないでください。
【連載続々公開!】
第2回 発達障害の僕が発見した「学校に適応できず破滅する子」と「勉強で大逆転する子」の決定的な差
第3回 発達障害の僕が失敗から見つけた「向いている職業」「避けるべき職業」(★10/10〜掲載)
第4回 発達障害の僕が伝えたい「意識高い系」の人が人生から転落する危うさ(★10/11〜掲載)