物忘れの重症度は、本人の自覚を基に、物忘れの頻度が月に0~1回の場合を「物忘れなし」、週1~2回を「軽度」、週に3~4回を「中等度」、ほぼ毎日を「重度」と4段階に分類した。それぞれの該当者数は同順に、82人(33.5%)、87人(35.5%)、39人(15.9%)、37人(15.1%)だった。
この4群間に、年齢や閉経状態(閉経前/閉経期/閉経後の人が占める割合)、BMI、除脂肪体重、併存疾患、喫煙・飲酒・身体活動習慣などの有意差はなかった。ただし、物忘れの重症度が高いほど、不眠や不安、抑うつなどの訴えが多く、生活満足度が低かった。また、物忘れの重症度と有意な関連のある摂取栄養素は見つからなかった。
次に、対象者全体を40~54歳の中年群(166人)と、55歳以上のシニア群(79人)に分類した上で同様の検討を行った。すると、中年群では全体解析と結果が変わらず、物忘れの重症度と摂取栄養素の相関は見られなかった。一方、シニア群では、カリウム、マグネシウム、銅、ビタミンB1の摂取量が多いほど物忘れが重症という有意な関連が認められた。また摂取栄養素以外では、身体の自覚症状、生活満足度、不安、抑うつなども物忘れと有意に関連していた。
これら、有意な関連が見られた因子を独立変数とする多重ロジスティック回帰分析の結果、栄養素の中では銅の摂取量のみが引き続き有意な因子として残った〔10mg/kJ/日あたりの調整オッズ比(aOR)1.34(95%信頼区間1.11~1.66)、P=0.004〕。さらに、年齢やBMI、その他の背景因子を加えて調整しても、銅の摂取量が多いことは、やはり物忘れの重症度と有意に関連していた〔aOR1.25(1.08~1.50)、P=0.006〕。
この結果から著者らは、「銅の過剰摂取は高齢日本人女性の主観的な物忘れの重症度と正の関連がある。銅の摂取量を減らすことが、高齢女性の物忘れ症状を抑制するかもしれない」と述べている。銅の過剰摂取が物忘れにつながる機序については、「アミノ酸と結合した銅の一部は血液脳関門を通過して脳に到達し、酸化ストレスや細胞障害を惹起する可能性がある」などの考察を加えている。
なお、一部の著者が食品関連企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2020年10月5日)
Abstract/Full Text
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/fsn3.1740
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