――なるほど。そう言う意図を理解してから、あらためてこの本を読むと、メッセージがすんなりと腹落ちする気がします。

小野 3つ目は「膨大なデータを集められるようになった」という変化です。これもデジタル化の重要な側面といえます。

 従来の意思決定は「勘と経験と度胸」で行われているところがありました。出版社でも「この本は売れると思います!」「どうしてだ?」「俺の勘です」というやりとりがあったはずです(笑)。

 でも、今はさまざまなファクト、それこそ粒度の細かいファクトをデータで取ることができます。「この商品は絶対イケる!」と思って商品化してみたけれど、実際に棚にセンサーをつけてみたら、誰も手にとっていない。そもそも、その棚へ行く人がいなかったなど、何でもデータで取れてしまいます。

 これまで組織の中では「企画力がある人」「声が大きい人」に能力があると思われがちでしたが、細かなデータがすべて取れてしまうと「この商品はイケる!」「理由は、俺の勘だ」は通用しなくなってきます。

――いろんなデータが取れることによって、すべてがデータドリブンで見えてくる。これはすごく納得できます。その一方で、今ビジネス界では「理論やサイエンスで分析する」より、「アート思考が大事」という風潮も感じます。

小野 「データドリブン」と「アート思考」。この2つが矛盾するという見方もわかりますし、矛盾しないという見方も両方あって、どちらも理解できます。ただ、僕は「矛盾しない」と思っています。

 膨大なデータが取れるようになったのは事実ですが、データはそれだけではゴミと同じです。

 どんな仮説を立ててそのデータを読み解くのか。あるいは、データサイエンティストたちは、膨大なデータから、どのような「道筋」を発見していくのか。ここが重要になってきます。

「膨大なデータがあるから、人の感性はいらない」ではなくて、仮説の立て方や視点の持ち方、道筋の見つけ方といった部分こそ、今の時代に必要なセンスであり、アート思考なのだと僕は捉えています。

 かつての「単なる勘や経験」とは違い、膨大なデータと向き合いながらも、それに溺れることなく、仮説を立てたり、道筋を見つけ出していくセンスや感性。こうしたものが、アフターインターネットの時代には特に必要なのだと思います。

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