あらゆるものが「少数の権威」から「小さな個の集まり」へ

 社内コミュニケーションも「少数の権威」から「小さな個の集まり」へ変わってきている部分があります。

 かつては、少数の役職者たちの意向ですべてが決まっていました。権威があって、立場もある年配の人たちの言うことがとにかく大事。「小さな個」に影響力はありませんでした。そもそも、意見を拾うことすらできません。

 でも最近は、スラックのようなビジネスチャットを使うことも多くて、「小さな個」であっても意見を言いやすく、簡単に共有できます。

「自分だけかもしれないんですけど、ちょっとこんなことを思ってるんです……」と誰かが言って、瞬く間にそれに賛同する人たちが出てくる。

 例えば、セゾン情報システムズでは「他の事業部との交流がもっとあったらいいなと、ちょっと思ってました」というスラックでのある人の発言に「いいね」のリアクションがたくさんつき、「確かにもっと交流があった方が良いね」ということになり、事業部を超えたビアバストが始まりました。

 地位も影響力もない、入社したての人だとしても「無数の個」が集まって、「少数の権威」を凌駕するようになっていく。これは大きな変化だと思います。

――「ビフォーインターネット」と「アフターインターネット」の変化を「少数の権威から、無数の個の集まりへ」と表現してもらえると、変化の本質をものすごく捉えやすいです。そのほかに「本質的な変化」はありますか?

小野 2つ目は「予測可能から予測不可能へ」という変化です。アフターインターネット時代の本質的な特徴といえます。

 予測可能な時代は、過去の成功体験を踏襲していけば、それでよかったんです。「先人はこうやって成功したんだから、それを抜け漏れなくしっかり守る。そうすればうまくいく」。成功体験の踏襲がキーファクターだったんです。

 でも、予測不可能な時代になると、変化していく世の中に身を委ねていくしかない。「成功体験の踏襲」より「変化の受容」が重要になってきています。

――そもそも、なぜそんなに「予測不可能」になってきたんでしょうか?

小野 大きいのは、やはりコミュニケーションの変化です。

 これまでのコミュニケーションは一方通行でした。たとえば、新しい商品が出て、それをどこで知るかと言えば、テレビ、新聞、雑誌が主でした。

 いずれにしても、メディアにかけたお金がそのまま「認知の拡大」に繋がりました。

 もちろん昔から“口コミ”はありますけど、その拡散エネルギーは現代とは比べ物になりません。口コミと言っても、友だちとご飯を食べて、「これよかったよ」というくらい。小さなリアルな繋がりに影響力は限定されていました。

 でも、今は「小さな個」の拡散エネルギーは凄まじい。誰かが「これ、おいしい!」とつぶやいたら、それが数万リツイートされるなど、一気に広がるんです。その動きはまさに予測不可能です。

「会社から個人へ伝える」一方通行のコミュニケーションのときは、その反応や影響を予測することもある程度はできました。

 でも、「会社」とか「組織」という粒よりも、もっと粒度が細かくなりました。それぞれの「個」が発信し、お互いに繋がって、ダイナミックに化学反応的に変化していくので、反応や影響はコントロール不能・予測不可能になりました。

 仕事の仕方も自ずと変わってきます。例えばいま、クレディセゾンで私たちが企画運営している「セゾンのお月玉」では、新しい機能を作るとき、まず小さく作ってリリースします。SNSでの反応や各種数値データなど、実際に起きたファクトを見ながら細かい方針転換を繰り返しながらサービスを進化させていっています。

 過去の経験に基づいて「こういうものを作ればこんな反応があるはず」という予測は立てるのですが、予期せぬ反応の中にこそ改善へのヒントがあります。そういうものをどん欲に取り込みながら改善活動をしています。

「予測可能な時代」は「成功体験の踏襲」でよかったけれど、「予測不可能な時代」になったら、いったいどうしたらいいの。簡単に言うと、そんなことを語っているのが『その仕事、全部やめてみよう』という本なんです。