大学受験の最難関である東大理三に、4人のお子さん全員を合格させた佐藤亮子さん。2015年の秋に佐藤さんにお会いして以来、取材や講演などで軽く100回以上お話を伺った。驚くのは話の引き出しの多さだ。
今までに幼児教育の重要性、中学受験や大学受験のサポート方法、子育て論などについてたくさんお話を伺ったが、新著『東大理三に3男1女を合格させた母親が教える 東大に入るお金と時間の使い方』は「お金と時間」という新しい切り口。「佐藤さんはどのようにお金と時間を使ったか」に加え、子どもの学力を伸ばすためのさまざまな佐藤ママメソッドが紹介されている。
第一子であるご長男を授かった時、佐藤さんは「子どもの未来の可能性を拓くために重要なのは教育。本人が希望する道に進めるよう、能力を最大限に伸ばしてあげたい」と思ったという。ご長男が生まれる前から小学校の教科書に目を通し、童謡集を購入するなどの準備を始めた佐藤さんは、教育費は惜しまず、時間の無駄を省いてきた。
わが子の幸せな未来のために学力を伸ばしたい、わが子を東大に入れたいと考える方はもちろんのこと、社会人や専業主婦にとっても役に立つ情報が満載だ。5回に分けて、佐藤さんの魅力、独自の子育て、書籍の特徴などについて紹介したい。(教育ジャーナリスト 庄村敦子)

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 東大をはじめとする難関大学に合格するために、「幼児教室、中学受験塾、中高一貫校、大学受験塾に通う」という王道を歩むと、多額の教育費がかかる。

 東京大学学生委員会が公表している「学生生活実態調査報告書」(2018年)をみると、世帯年収が950万円以上の家庭が6割を超えている。父の職業のトップ3は「管理的職業」が42.3%、「専門的、技術的職業」が23.0%、「教育的職業」が8.1%。一方、母の職業のトップ3は「無職」が34.2%、「事務」が19.8%、「教育的職業」が12.9%となっている。父親はトップの管理職と2位の専門・技術職を合わせると65%を超え、母親は3割以上が専業主婦だ。

 今年9月に国税庁が発表した「民間給与実態調査」によると、全体の平均給与は436万円。男女別にみると、男性は540万円、女性は296万円だ。

 東大生の世帯の年収額をみると、450万円未満が13.2%いるが、全体的にみると、高収入だといえる。

 3男1女を東大に合格させた佐藤亮子さんは、著書『東大理三に3男1女を合格させた母親が教える 東大に入るお金と時間の使い方』で、こう語っている。

「他人の収入が気になっても、他人のお金は使えないのです。『うちはうち、よそはよそ』と割り切るのがいちばん健全な考え方です。自分の家庭の収入内で、堂々と生きていく姿勢をわが子に見せることも、親の大事な仕事といえます」

 衣食住にかかる費用は欠かせない。それに加えて、趣味や娯楽、交際費にもお金を使いたいだろう。佐藤さんはそのことを肯定したうえで、「わが子が将来自活できる人間になるために、教育費を惜しまないでほしい」と話す。

 佐藤さんは、大学入学までにかかる教育費を「0~3歳」「4歳~6歳」「小1~小3」「小4~小6」「中1~中3」「高1~高3」の6段階で考え、限りあるお金を「どの段階で」「どのように」「どれくらい」使うかを戦略的に考えないといけない、と語る。

 お子さんが0歳のときから教育費を惜しまなかった佐藤さんに、御主人は「自己破産だけはしないでよ」と言いながらも、教育を任せ、温かく見守ってきた。

 それでは、佐藤さんは4人のお子さんの子育てにどのようにお金を使っていたのだろうか。同書には衣食住や教育費の使い方が詳しく書かれているが、そのなかから印象に残った話を紹介しよう。

●第1子妊娠中に小学校の教科書と童謡集を購入
 小学校で配布される教科書は、誰でも書店で購入できる。佐藤さんはご長男を妊娠中、「子どもの勉強をサポートするためにも、小学校の教科書に目を通しておこう」と思い、全学年、全教科の教科書を購入。国語の教科書を絵本感覚でお子さんたちに読んであげた。

 国語の教科書に出てくる話は名作が多い。小学校の国語の教科書の出版社は4社あるので、他の出版社の国語の教科書も買って、絵本感覚で読んであげると、「国語は面白い!」と感じるだろう。

 佐藤さんが音楽の教科書を見たとき、かつて掲載されていた多くの童謡が消えていたことにショックを受け、「学校で教えないのなら、私が歌ってあげよう」と決心。カセットテープ付きの童謡集も購入した。

●年に4回、誕生日プレゼント
 幼稚園児だったご長男の誕生日プレゼントに、当時流行っていたロボットのおもちゃを買おうとした佐藤さん。そのとき、2人の弟がそのおもちゃを欲しがって、おもちゃのとり合いになる様子が目に浮かんだという。それで、思い切って同じおもちゃを3つ買った。

「3人に同じおもちゃをプレゼントすると、それはそれは大喜び。仲よく3人で遊んでいました。同じものを買ってあげてよかった」と、当時のことを思いだしながら笑う。

 その日以来、佐藤家では、お子さんの誕生日にはきょうだい全員がプレゼントをもらうようになった。お嬢さんが生まれてからは、年に4回も誕生日があるようなものだ。佐藤さんのお子さんたちの仲がいい理由のひとつに、この誕生日プレゼントがあると思う。

 佐藤さんは、きょうだいの人数分のプレゼントを買う予算がないときには、誕生日の子どものプレゼントの予算を人数で割り、きょうだい全員にプレゼントすることを勧める。

●習い事は「勉強系」「運動系」「芸術系」
 東大生が幼児期にしていた習い事について取材やアンケート調査を何度か行ったとき、多かった回答が公文、ピアノ、スイミング。佐藤さんのお子さんたちの習い事は、全員が1歳前後から公文、3歳からバイオリン、4歳からスイミング。お嬢さんだけ、本人の希望で小1からピアノも始めた。

 佐藤さんは、「勉強系」「運動系」「芸術系」を1つずつ習うことを勧めている。運動系をスイミングにしたのは、佐藤さんが子どもの頃、泳ぎが苦手だったことが大きい。結婚してからスイミングスクールに通うと、わずか2週間で泳げるようになったため、お子さんたちが幼いときから水泳指導のプロに教えてもらいたいと思ったのだ。

 芸術系をバイオリンにしたのは、佐藤さんが中2のときに読んだ新聞記事で、バイオリニストの鈴木鎮一氏が提唱した「スズキ・メソード」のことを知り、感動したからだ。

 鈴木氏の「どの子どもも指導者次第で伸びる。子どもが伸びないときは指導者である大人の責任」という考え方に共感した佐藤さんは、「将来結婚して子どもができたら、必ず、スズキ・メソードのバイオリンを習わせようと決心した」そうだ。

●家庭用コピー機を購入
 公文式のプリントの文字は、学習進度が進むにつれて小さくなる。その文字を見やすくするために、佐藤さんは公文式の先生の許可を取り、コンビニのコピー機で拡大コピーした。

 毎回コンビニに行くのは面倒だし、大量にコピーするため、家庭用コピー機を買うことを決心。現在は2万~3万円で売られているコピー機が当時は45万円。

「さすがに高すぎるので、電話して価格交渉してみると、高すぎてあまり売れなかったようで、14万円にまで値下げしてくれました」というから、さすがの行動力と交渉力!

 こうして佐藤家にやってきたコピー機は、壊れるまでの17年間、公文式のプリント、バイオリンの楽譜、過去問の解答用紙の拡大コピーのほか、オリジナルノート作りにも大活躍した。

●参考書・問題集の大量買い
 大学受験の参考書や問題集は、大量にまとめ買いした。ご長男はオーソドックスな参考書、次男さんは漫画やイラストをふんだんに使った楽しい参考書、三男さんは深く説明された分厚い参考書と、好みが違っていたため、「誰か使うだろう」と考えたのだ。お嬢さんは、学校で使っている参考書がメインだが、佐藤さんが買ってきた参考書や問題集も使った。

 当時の佐藤さんは超多忙で、どれを買うか悩む時間や、何度も書店に足を運ぶ時間を省きたかった。結果として使わない参考書・問題集を買ってお金の無駄になってもいいと割り切っていたのだ。

 参考書・問題集の大量買いに、佐藤さんのお金と時間に対する考え方が出ている。

 それぞれのご家庭に金銭事情があると思うが、子どもの学力を伸ばすための「お金の使い方」は、さまざまな工夫ができる。Q&Aでは、あまり教育費を使えないというシングルマザーに、やらせることの優先順位やお金を使わないでお子さんにできる数々の方法を優しくアドバイスしている。