現場の知恵を集めるのが経営の仕事

──社員の意見を取り入れ、ブラッシュアップする際、どのように会議を進めていますか? 効率よく最適解を生み出す会議のコツなどがあれば教えてください。

土屋:いつも意識しているのは、以下のステップです。

1.重要な会議(年数回)のテーマ、問題意識、可能な選択肢などの討議資料を、事前に自分がつくって会議前に配布する
2.会議では、参加者全員にまず自分の異論やアイデアを出す。ここでほぼ正しい方向が見える
3.出席者の意見を集約する形で方向性(結論は実験をしないとわからない)を出す
4.どうしても私の意に沿わないときは、もう一度資料をつくり直して、再度会議をする

会議のやり直しは8年で2回ありました。
ただ、それは議論の結論が悪いのではなく、私の資料のつくり方が悪かったんです。
「忖度」は会社の滅亡につながるので、会議で「異論」の出る会社がいい会社だと思っています。

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──本の中で「社員の嫌がることはしない」と書かれていましたが、社員を指導しなければならない場面も出てくると思います。土屋さんはどのようなほめ方・叱り方をしていますか。

土屋:ほめるときは直接ほめます。叱るときは、他のよい人やモデルになる人をほめるようにしています。

幹部や優秀な社員には直接指摘することもありますが、「指摘内容も、50%は間違う可能性がある」ということも、正直に伝えています。

大きなミスが起きたときも、あまり人を責めません。

確率の問題ですから、ミスはしょうがない。

だから、細かいことはあまり言いません。

会社の原理原則に関わるようなことを間違えた場合に指摘するだけです。

ワークマンは「高機能・低価格」という軸があるのに、「儲かるから、高額商品のテレビCMを出したい」と言われたら、会社のブランドを損なうので、「大丈夫なの?」と声はかけます。

──「叱るとき、他のよい社員やモデルになる人をほめる」というのは、どのような意図があるのでしょうか?

土屋:「叱る」というのは感情ですから、意味がないんです。

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本人が気づかない限り、「あ~怒られちゃった」で終わってしまいます。

そうではなく、本人に気づかせなければいけません。

ですから、私は「〇〇さんともあろう人が、こういうことをやるんですか」という、自発的な反省を促す言い方をしています。

──土屋さんが目指すリーダー像を教えてください。

土屋:私が目指すリーダーのスタンスとして、以下7つのルールを設けています。

1.何をやるかはブレない
2.目標を多く掲げない
3.社員がガツガツしなくても、成功する市場のポジションを押さえる
4.社員をリードするのでなく、社員のやる気とアイデアを引き出す
5.人の善意と自発性に賭ける
6.社員を信じ、教育を第一とする(間違っていると思うことも教育のためやらせることもある<小さい実験のみ>)
7.マイクロマネジメント(細かいことまで指示を出す)は絶対にしない

経営者は謙虚に現場の意見を聞かなければいけない。
絶えず、現場は正しい。

ただ、100の現場の集合体が経営にはならないわけです。

だから、現場の知恵を集めるのが経営の仕事だと思っています。

だから、私にとってリーダーシップとは、社員の力を引き出すコーチ型でいいと思っています。監督でなくてもいいんです。

ps.「しない経営」の極意についてはこちらのサイトでも掲載していますので、ぜひご覧ください。

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