「部下に任せきれない」が半数以上も
プレイングとの両立はより深刻な悩みに

――管理職になった直後は、どのような悩みに直面しやすいですか。

 管理職へと昇進した直後に直面するのは、部下との問題です。当社(リクルートマネジメントソリューションズ)が2015年に行った調査で、管理職に昇進した後の悩みについて、半年以内、2年以内、2年以降でそれぞれ尋ねたところ、下記の結果になりました。

管理職が直面する悩み(c)リクルートマネジメントソリューションズ 禁無断転載
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 半年以内での悩みの1位は「部下に任せきれない」で54.7%に上っています。新たに管理職になって短期間で成果を出さなければならないプレッシャーがあるなかで、メンバーが育つのを待っていると時間が足りない、それなら自分でやる方が早いとつい考えてしまうようです。また、メンバーも多忙で逼迫しているので、これ以上仕事を任せると規定労働時間を超えてしまうという問題もあります。

 しかし、こうした部下に対する問題は時間とともに解消していきます。「部下に仕事を任せきれない」という悩みは2年以内には32.8%、2年以降には20.3%にまで低下します。

 その一方で課題として残るのが、管理職自身の問題です。「マネジメント業務とプレイング業務とのバランスが取れない」という悩みは半年以内で35.0%に上りますが、2年以内でも32.2%と引き続き高い傾向があります。

 管理職に対して減らしたい業務を尋ねると「プレイング」という割合が非常に高くなっており、やむを得ず続けていることがわかります。本来であれば、戦略の立案や組織開発など、マネジャーの重要な役割を全うしたい意識はあっても、なかなかそのスペースができないのです。

 現在はコロナ禍でリモートワークになり、部下のマネジメントがさらに難しくなっています。特に難しいのが、新しく組織に入ってきた新入社員や中途社員とのコミュニケーションです。必要なときに声を掛け合いながら信頼関係を作ることが、オンライン環境では築きにくいからです。

 新型コロナウイルスの感染拡大前から、メンバーの会社への帰属意識の低下は課題になっていましたが、その傾向はコロナ禍でより強まった印象があります。エンゲージメントが高い組織ほど成果が出せるという調査結果もある中で、帰属意識をどう高めていくのか。成果を求められる上で、大きな課題といえるでしょう。