後輩の育成、企画のマネジメントを
あえて経験させる仕組みを

――冒頭で話されたように、これまで何の訓練も受けてこなかったメンバーが、ある日突然、管理職になるケースがいまだにあります。新任の管理職が戸惑わないためにも、管理職候補はどう育成すべきですか。

 いきなりメンバーから管理職になるのは、言わば選手が急に監督になるようなものです。後輩の面倒をみたり、何か企画業務にアサインしてプロジェクトをマネジメントさせるなど、マネジメントのプレ経験を上司が仕組むことが大事だと思います。

 管理職がすべて自分で組織の戦略を考えていると、後進が育ちません。管理職が行うべき業務をあえて切り出して意図的に部下に渡すことが、管理職の先行経験につながります。そこから面白さを見つけられると、マネジャーという仕事の重要性を認識し、貢献できる感触を得て昇進に前向きな気持ちを持つ人も出てくるのではないでしょうか。

――管理職は驚くほど多くの問題に直面しているわけですが、人事部が行う管理職研修などを通じて解決することは難しいのでしょうか。

 これまでの研修で解決が難しいというより、効果が限定的になってしまうということが正確な表現です。限定的になってしまう理由は、2つあると考えています。1つは、研修がやりっぱなしである点です。実際に行われている研修は、予算や労力の問題もあり、昇格・昇進した際に1度だけ研修を受けて、「以上、終わり」というケースが多いです。

 しかし、先ほど挙げたように、マネジャーの悩みは年次が上がるにつれて変わっていきます。そうした悩みに合わせた施策を打つことが大事ですが、実施できている組織は少ないように思います。

 2つ目は、実践的な知恵の共有がないことです。コロナ禍であれば、リモートワークの中でマネジャーが試行錯誤しながら対応していることがあると思います。課題が出てきたときに、一緒に考えてくれる管理職同士の横のつながりがあれば、知恵が共有されますが、これも行っている組織は少ないようです。