Munster氏らは、新型コロナウイルスへの感染判明後、49、70、77、85、105、136日目にこの女性の咽頭または鼻咽頭から採取された陽性検体を用いて、ゲノムRNAとサブゲノムRNAの定量化を試みた。その結果、ウイルス量が最も多かったのは、感染判明後70日目に採取した検体であることが明らかになった。また、検体から単離した新型コロナウイルスを培養して電子顕微鏡で観察した結果、49日目と70日目の陽性検体から培養されたウイルスが、新型コロナウイルスの形態と一致することが判明した。このことは、感染力のある新型コロナウイルスが、感染判明後、少なくとも70日間は患者の体内に存在していたことを示している。
さらに、女性は、COVID-19に対する治療として、感染判明後71日目と82日目の2度にわたり回復期血漿治療を受けていた。しかし、85日目と105日目に採取された咽頭スワブ検体からは、ゲノムRNAとサブゲノムRNAが検出されており、この女性に対しては、新型コロナウイルス除去に回復期血漿治療が有効ではないことが示された。サブゲノムRNAの検出は、ウイルスがいまだに自己複製を行っていることを意味する。ただし、これらのウイルスには感染力はなかった。
著者らは、この女性患者の感染期間がこれほど長引いたのは、患者の免疫力が低下していたため、新型コロナウイルスを撃退できなかったことが原因だと考えている。血液検査では実際に、体内で新型コロナウイルスに対抗する十分な抗体が作られていないことが確認された。血漿療法が効かなかったのも、抗体濃度が低かったためだという。
Munster氏は、「新型コロナウイルスは今も拡散し続けているため、さまざまな免疫抑制障害を持つ人々の感染例も増えていくことが予想される。新型コロナウイルスがそうした人々にどのような影響を及ぼすのかを理解する必要がある」と主張する。また同氏らは、「COVID-19はまだ十分に解明されていない。それゆえ、感染者が感染力を持ち得る期間についての理解を深めることが、公衆衛生対策を決めていく際の指針として役立つだろう」と結論付けている。(HealthDay News 2020年11月9日)
https://consumer.healthday.com/11-9-asymptomatic-covid-woman-shed-virus-for-70-days-2648623618.html
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