日本企業は現地へ行っても、まともに管理・監督をしていなかった

――日本国内で付加価値の高いものを作る。そんな大前提を忘れてしまったのが一番の原因ということね。だけど、アメリカのメーカーも、海外で生産していますよね? なぜ、彼らは成功しているんですか?

 それは、現地に対する姿勢の違いでしょう。

 はっきり言って、日本企業は甘すぎたということです。

 たとえば、日本企業が台湾へ出ていったとき、台湾の下請け会社に乗り込んで「ああしろ、こうしろ」ということを、しつこいくらい、100個でも200個でも徹底して注文を言い続けたかと言えば、そんなことをやっている企業はほとんどなかったんじゃないでしょうか?

 昼だけ工場のある台湾の田舎に出向いても、夜には台北に戻ってきて、高級中華の接待を受けていた。これではダメですね。

 私が知る限り、アメリカ人はそんなことはしていなかった。

 たとえば、アップルなどから送られてきたアメリカ人は、台湾だろうが、中国だろうが、現地の言葉を話せるのは当たり前で、通訳なんか通さずに、本社の注文を山ほど持ってきて、しつこいくらいに言い続けるんです。言うだけじゃなくて、現地の工場に張り付いて、ずっと見張っていた。

 工場の前にあるビジネスホテルに何年も泊まり込んで、徹底的に管理・監督していたアメリカ人を僕は何人も知っています。

コロナ禍が「日本の製造業」を復活させるチャンスでもある理由

――そうなんですか?

 ええ、半端じゃないですよ。

 そこまでやった日本企業がどれだけあったかと言えば、僕が知る限り、ほとんどなかった。現地の言葉が十分に話せる現地駐在員がどれだけいたか。それだってかなり怪しかったです。

 日本企業とアメリカ企業では、そのあたりの徹底度が全然違いました。それだけ、ものづくりへの厳しさが違っていたということです。

 日本だって、本当は自分の国で「いいものを作る」というところにこだわっていかなかきゃいけなかたったのに、それを海外に出して、さらに、しっかりと監督すらしなかったんですから、衰退するのは当然だったと思います。

――最近は、新型コロナの問題で、グローバル・サプライチェーンが機能しなくなり、海外にあった工場を日本に持ってくることに国が補助金を出すようになっています。こういう動きについては、どう捉えていますか?

コロナ禍が「日本の製造業」を復活させるチャンスでもある理由

 すごくいい動きだと思っています。そういうことを本気でやっていったら、必ずよくなると思います。

 日本の労働者は「高い給料が欲しい」という人が増えて、「本当にいいものを作る」というところにコミットする人が減ってしまっています。でも、その根本のところというか「クオリティを高めるんだ」という覚悟が決まってくれば、すぐによくなると私は思っていますけど。

ーーコロナ禍を機に、製造業の国内回帰が進めば、それをきっかけに日本の製造業が復活する可能性はおおいにあるということですね。

 僕はそう思いますね。