総予測#14
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特集『総予測2021』(全79回)の#14では、2021年の雇用・賃金の動向について予想した。景気が回復に向かっても、雇用のミスマッチが失業率改善の足かせとなりそうだ。産業間、部門間の格差もおおきくなっている。雇用情勢に厳しさが残る状況下では、賃上げも鈍く2%割れとなる公算が大きい。(日本総合研究所副理事長 山田 久)

「週刊ダイヤモンド」2020年12月26日・2021年1月2日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は原則、雑誌掲載時のもの。

労働需給悪化の割に
上昇しなかった失業率

 2020年の雇用・賃金情勢は、新型コロナウイルス感染拡大による景気悪化で、厳しいものとなった。労働需給は悪化し、賃金も下落した。21年を予想する前に、コロナ禍が労働市場にどのような影響を与えたかを確認しておこう。

 有効求人倍率は20年1月には1.49倍だったが10 月には1.04倍まで低下し、11都道府県で1倍を切った。完全失業率は上昇傾向にあるが、10月で3.1%、年初からプラス0.7%ポイントと、過去の求人倍率との関係からすると小幅な上昇にとどまった。

 労働需給悪化の割に失業率の悪化幅が低めにとどまっているのは主に二つの理由による。

 第一は、労働市場から退出した人が多くいることだ。就業者数は4月単月で100万人余り減少し、リーマンショックでは数カ月で生じた雇用の喪失が今回はわずか1カ月で生じた。職を失った人の大半は非正規労働者で、その多くが職を探すことを諦めたため、失業者として数えられていない。

 第二は、企業内余剰人員の存在。4月には休業者が平常時の3倍に上った。その後経済の持ち直しで全体では大きく減少したが、一部産業でなお多い状況にある。

 日銀短観によれば、19年末には全ての産業分類で人員が不足超であったのが、20年6月調査以降は多くの製造業や飲食・宿泊業で余剰超になった。雇用調整助成金の特例措置もあり、これら余剰人員の雇用が維持されている。

部門別の景況感、
労働需給のばらつきがおおきくなる

 賃金に目を転じてみる。1人当たりの現金給与総額は4月以降前年割れで推移している。20年は09年以来の大幅なマイナスになる見込みだ。

 非正規労働者削減で低賃金のパートタイムの割合が低下したことが押し上げ方向に作用しているが、多くが正社員である一般労働者の基本給が前年割れとなったことと所定外給与および賞与の大幅なマイナスが影響した。

 以上を念頭に、21年を展望してみる。