子どものことより
自分を優先することも大事
――親のがんばりが子どものお受験に向かっていて、ストレスから自制心を失っている親もいます。以前、とあるお嬢様学校の近くで、私の前を親子が歩いていたんですが、紺色のスーツを着た20代くらいのきれいなママがこう言い放ったんです。
「アンタみたいなバカを生んだ覚えはない! 200万円もドブに捨てたことになってどうしてくれんのよ!」と。
その瞬間、まだ幼い娘さんが泣き出して、あまりにも可哀想で見ていられませんでした。
てぃ先生 そういう親御さんは、子どもを周りと比較して苦しんでいるんだと思います。「子どもを理想の人間に育てたい」とか、「自分が叶えたかったことを子どもに叶えさせたい」とか、子どもを自分の思い通りに育てようとして、うまくいかないとすべて子どものせいにしてしまう。子どもを自分の思い通りに育てようとする親御さんは、幻想にとりつかれている状態です。
そうやって育てられた子どもは、自尊心や自己肯定感が低いまま大人になってしまうでしょう。親が望むお嬢様学校に進学したからといって、その子が幸せになる保証もありませんよね。200万円で済むならまだしも、私立の中高一貫校から大学まで何千万円も払って親の言う通りに進学させて、その先の長い人生を自己肯定感が低いまま生きるとしたら、その子は苦しいだけだと思います。
――学歴も就職先も、人生の幸せを約束してくれるものではないと、多くの人が気づきはじめています。一方で、混迷を極める時代だからこそなのかもしれませんが、子どもの教育に熱が入り過ぎているご家庭も多いと感じます。
てぃ先生 こういう時代だからこそ、子どもにとっての幸せは何なのか、親の見栄やプライドは捨てて真剣に考えてあげることが大事だと思うんです。ちなみに僕は、小中高とずっと公立の学校でしたけど、今めっちゃ幸せですから。
親御さんが陥りやすいのは、子どもには無限の可能性があって、やらせれば何でも得意になると思い込んでしまうことです。でも実際は、無限の可能性というものはありません。大人がそうであるように、子どもにも得意不得意や、好きなことも嫌いなこともあります。
そもそも、どんな親も完ぺきな人間ではないですし、子どもはその親から生まれているわけですから、何をさせるにも限度というものがあるはずです。子どもにだけ過剰な期待をかけて、理想通りに育てることが自分のステータスのように勘違いしてしまうと、いつか子どもに反動が出かねません。先ほども話したように、子どものことより自分を優先することも大事です。「子どもの幸せのためには、何よりもママやパパの幸せが大切」だということだけは、絶対に忘れないでほしいですね。