その中でも、組織人としての究極の技術として、王宮で権力抗争を繰り広げる廷臣の言動についてまとめた法則24「完璧な廷臣を演じよ」は、組織人にとってたいへん参考になる記述に満ちている。本書では、王室における延臣の技術として下記のものを挙げている。
誇示は禁物
呑気な態度を見せよ
やたらとへつらうな
認められるように仕組め
相手によって態度や言葉づかいを変えよ
悪い知らせの使者になるな
上の者を直接批判してはならない
なるべく上の者には頼みごとをするな
外見または好みのことで冗談を言ってはならない
王室の皮肉屋にはなるな
自己観察を怠るな
感情を抑えよ
時代の精神に合わせよ
喜びの発信者になれ
興味を持った方は実際に読んでいただくとして、これらのうちの一部について、自分の経験も踏まえて少し解説をしておきたい。
誇示は禁物
認められるように仕組め
「自分の成功は自分のもの、他人の成功も自分のもの」のように話を「盛る」人もいるが、組織の中の人はその一部始終を見ているから、本当の貢献者は誰かをよく知っている。そのように自分の業績を過大に誇示する人は信用されない。そして排斥される。「盛る」といった一種の歴史の改ざんは、かなりの上位者にだけに許される行為である。
賢い人は、徹底的に他人を褒めながら自分の貢献をさりげなく示す。顧客の経営幹部が自社と取引するために、先方社内で大変な労をとってくれた――そのストーリーはあくまで相手の経営幹部の努力をたたえるために語られる――ように見えるが、実際には経営幹部の依頼に応じて柔軟な対応をした自分の活躍の様子をその話の中に忍ばせ、ごくごく控えめに語る……といったようなことである。
このようなアプローチを採る人こそが評価を高める。自分の功績はもちろん表立っては誇示しないし、話のテーマには据えないものの、余談や、後日談や、サブストーリーに如才なく組み込み、実際にはその事実が多くの人に知られ、認められるように仕組むのである。