ワンマントップが導入しがちな
「馬ニンジン」式の人事システム

 ワンマントップは、組織図の上側から見通しが良い状態を好みます。

 社内の組織に当事者意識を持たせたいと考え、全てを自分が決める体制からの進化の際にトップが導入しがちなのが、成果による評価指標を与え、給与と昇格を決める、「馬ニンジン」式の人事システムです。

 その組織図内の誰に、どの責任を負わせたかを明瞭にしておく、我々が見慣れた組織図も、「人治」マネジメントが前提である米国由来の表記方法であり、上の立場にいるものの視点からは、安心感のある「見える化」の方法です。

 この組織の成果の評価の際には、そこに、ワンマントップの主観も加わります。成果主義評価、プラス人物と能力評価の両面を行うこと自体は正しいのですが、いかんせん、絶対権力者の主観評価は、何よりも強くなります。

 結果として、多くの側近にとっての行動指針は「数字を達成する」こと、そして何をさておき、「トップに好まれ、評価されなければならない」ということです。

 ここで、もしトップがフェアネス(公正さ)を組織内に徹底できないと、自分だけが他よりも評価されようというエゴイズムの蔓延を許すことになります。一見、絶対的な尺度に思える数字も、実は予算、計画という、主観的な要素が入りこみやすい基準をベースに評価がなされますので、やはりトップ、あるいはトップに気に入られている幹部の主観が影響します。

 結局、ワンマン色が強くなればなるほど、みな、近隣の独裁国家の如くトップに気に入られようと動かざるを得なくなります。社長の機嫌を取ることよりも、事業繁栄のために意見を通そうとして、トップの逆鱗(げきりん)に触れて辞める社員がではじめると、さらに恐怖政治色は強くなっていきます。

 これが、事業を発展させるうえで最も大切な「フェアネス」「チームワーク」という組織の基本動作の習得と育成を阻(はば)むことにつながります。