有利な条件で融資を受けることで、
少ない自己資金で大きな投資が可能になる

 つまり、実際に手にする年額の家賃収入からの真水の収入が、750万円だということがわかった。

 しかし、これは融資をまったく活用せずに不動産投資をおこなった場合だ。不動産投資を全てキャッシュで実行する人はほぼいないだろう。むしろ、不動産投資においては賢く有利な条件で融資を引くことで、少ない自己資金で大きな投資が可能になる。

 仮に、この不動産投資の総開発費用を1億2000万円としよう。そして1億1000万円のローンを次の条件で借り入れることに成功したとする。自己資金は1000万円だ。

 借入れ総額:1億1000万円
 返済期間:35年元利均等返済
 金利:1.5%

 ここからローンの年間返済額(Debt Service/DS)を算出する。

 といっても、自身で複雑な元利均等返済の計算をする必要はない。ローンシミュレーターなどインターネット上にはいくらでもツールが転がっているし、ローン返済計算に便利なアプリもある。僕はスマホに入れているローン返済シミュレーターか、エクセルを使うことが多い。

 年額ローン返済(DS)は、次の結果になる。414万円。
 最終的に手に入るローン返済後の所得(CFAF:Cash Flow After Finance)を算出するのは、もう簡単だ。

 つまりNOI(実質収益)から年額ローン返済を引けば良い。

 CFAF=750万円‐414万円=336万円

 この投資指標判断だけでも、この投資が実行できれば、ローンを返済しても年間の不労所得336万円をこの物件がしっかりと稼いでくれることがわかる。

 そして毎年順調に返済が進み、資産価値が下がらなければ、銀行への貯金をあたかも賃借人が手伝ってくれているように、純粋なあなたの資産が積み立てられてゆく。

 以下のイメージ図で捉えてもらいたい。年数の経過とともに右に伸びてゆく矢印の下側が投資した総額または支出で、上側にゆくと収益、つまり家賃収入だ。

 初年度(0年)は投資総額1億2000万円で、そのうち自己資金が1000万円となる。敢えてイメージで表現している理由は、この先のレクチャーで扱う実際の世界での事業計画策定にエクセルが使われていて一見複雑に見えるが、それをシンプルかつ直感的に捉えてもらうためだ。

 0年度は自己資金と融資活用で資金を投じ、続く1年目以降はNOI(実質収入)から年額ローン返済を差し引けば真水のキャッシュフロー、つまり不労所得が毎年入ってくる。

上田真路(うえた・まさみち)
建築家・不動産投資家
KUROFUNE Design Holdings Inc. 代表取締役CEO
ハーバード大学デザイン大学院で不動産投資と建築デザインを学び、投資理論とデザインの力を融合させたユニークな不動産投資を行う。
鹿島建設入社4年目に不動産投資を開始。数々の不動産投資セミナーに足を運び、不動産関連書籍を数十冊読破。そんな中で出会ったメガ大家集団をメンターに持ち、指導を仰ぎながら不動産投資をスタートする。最初に行った東京・神楽坂での新築マンション開発では超狭小地に苦労し、辛酸を舐めつつも独自の不動産投資スタイルを確立する。現在5棟の超優良物件を保有。保有物件の中では投資額が4年間のうちに26倍になったものもある。
1982年高知県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科、同大学院卒業後に鹿島建設入社。
大学院卒業時にリゾートホテル開発プロジェクトにより早稲田大学小野梓芸術賞を受賞。
同社では国内外で建築設計や大規模な都市開発業務に従事。鹿島建設社長賞、グッドデザイン賞、SDレビュー賞などを受賞。2016年、ハーバード大学デザイン大学院(GSD)へフルブライト留学。2018年、GSD不動産デザイン学科を卒業、外資系不動産ファンドでの投資業務を経験した後、KUROFUNE Design Holdings Inc.(デザイン事務所兼不動産ファンド会社)を創業し独立。現在はハーバード学生寮生活で得た原体験をもとに、住まいと学びを融合させた国際学生寮「U Share」を開発運営する。また、慶應義塾大学SFC特任講師、早稲田大学特任講師として「不動産デザイン」について教えている。