時代や環境変化の荒波を乗り越え、永続する強い会社を築くためには、どうすればいいのか? 会社を良くするのも、ダメにするのも、それは経営トップのあり方にかかっている――。
前著『戦略参謀の仕事』で経営トップへの登竜門として参謀役になることを説いた事業再生請負人が、初めて経営トップに向けて書いた骨太の経営論『経営トップの仕事』がダイヤモンド社から発売されました。好評につき発売6日で大増刷が決定! 本連載では、同書の中から抜粋して、そのエッセンスをわかりやすくお届けします。好評連載のバックナンバーこちらからどうぞ。

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そもそも戦略とは、「頂」に向かうためのシナリオ

 最近では企業内でも、営業戦略、商品戦略など、戦略という言葉が一般的に使われるようになりました。従来、使われていた「方針」という言葉が「戦略」に置き換わり、「今期の我が事業部の戦略につきましては……」という表現が使われている企業も多いようです。

 ただ、そもそも論に戻って狭義に捉えた時の「戦略」は、「今年は○○に取り組みます」レベルのものではなく、中長期に渡り挑戦的な試みを繰り返しながら、健全な成長性を確保するためのシナリオということになります。

 また、もし今、現業が低迷状態にあるとするならば、その状況を脱却して再成長軌道に入れることを目的に新たに挑戦するべき事項が明確になった、いくつかのハードルを越えていくV字回復のためのシナリオになっているでしょう。

サステイナブル・コンペティティブ・アドバンテージ(Sustainable Competitive Advantage、永続性のある競合優位性)の確保

 これは「永続性のある競合優位性」を得るためのシナリオという意味で、「戦略」という言葉の定義に適した表現だと思います。

 これを、もう少しくだけた表現に直してみると、

「一発だけの『打ち上げ花火』で終わることなく、他社よりも優位なポジションでビジネスを継続し、成長させるために、何に取り組むべきかを具体的に示したシナリオ」

 という感じになるでしょうか。

 あるレベル以上の事業規模に至った会社、あるいは成功して脚光を浴びている会社は、市場におけるポジショニングに成功し、まずは「戦略」的にも成功を果たせたと言えます。

 ところがその後、仮に毎年ある程度の利益幅を確保できていたとしても、
・売上が、前年対比+数%前後の実質横ばい状態が長期間続いている、実験や挑戦のなされない企業
・売上の微減傾向が長期化し、利益も減益基調で、先々には赤字化が予想される、下降基調にある企業
・自ら船を進める力が弱く、市場環境次第で売上が上下し、景気と言う名の風任せに波の上に漂っているだけのような状態の「笹舟」企業

 は数多くあります。

 これでは、市場の期待を上回る価値を提供、あるいは期待にそった価値の創出に挑戦できている状態とは言えません。

 本来、市場のニーズを上回る挑戦を、正しい検証を伴って続けていれば、顧客の離反は最低限に抑えられ、着実に客数は増え、事業は発展していきます。

 もし今、自社が低迷状態にあると感じているならば、すでに市場の求めている価値とのかい離が起きていると捉えたほうが良いでしょう。

 市場の開拓の余地があっても、それが見えていない、気が付いていない、あるいは現場は気が付いているが、そのことは上には伝わっていない状態と考えられます。