慢性疾患を対話的に解きほぐす
組織のワークフローや報酬システムをうまく設計すれば、万事うまくいくということはありません。どのようにワークフローや報酬システムを設計するかは、あくまでも組織をうまく運営する一要素にすぎません。
組織のワークフローが整っても、それらをいかに機能させ続けられるかは別問題です。
ましてや、組織の慢性疾患に対して、「ティール組織にすれば解決できるのでは」と考える経営者マインドを考えると相当危険です。
今、目の前で繰り広げられている問題に対して、一度、解決を試みることを脇に置き、慢性疾患がどんなものかを探る必要がある。その方法論が対話なのです。
まず自分がその問題に対しどう関わっているのかを探る。どこかにある方法を取り入れるのではなく、自分の組織内できちんと機能するセルフケアの方法を見つけ、実践「し続ける」ことが大事なのではないでしょうか。「ティール組織にしよう」と単純化されたアプローチはやめましょう。
考えてみてください。
「それぞれが自由に仕事に取り組むように」というティール組織のかけ声だけでは、自由も規律もありません。ただただ組織に混乱を生み出すだけです。
このように、慢性疾患に対して、既存の単純化されたアプローチを採用することは大変危険です。
大切なことは、慢性疾患が一体どういうものかを対話的に解きほぐすことです。
そうすることで、問題の発生を通じて、よりよい組織をつくっていくことにつながるのです。
様々な問題の発生をポジティブに受け止め、歓迎していくことが問題解決の第一歩なのです。
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経営学者/埼玉大学 経済経営系大学院 准教授
1977年、東京都生まれ。2000年、立教大学経済学部卒業。2002年、同大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。2006年、明治大学大学院経営学研究科博士後期課程単位取得。
2006年、早稲田大学アジア太平洋研究センター助手。2007年、長崎大学経済学部講師・准教授。2010年、西南学院大学商学部准教授を経て、2016年より埼玉大学大学院人文社会科学研究科(通称:経済経営系大学院)准教授。
専門は、経営戦略論、組織論。ナラティヴ・アプローチに基づいた企業変革、イノベーション推進、戦略開発の研究を行っている。また、大手製造業やスタートアップ企業のイノベーション推進や企業変革のアドバイザーとして、その実践を支援している。著書に『他者と働く――「わかりあえなさ」から始める組織論』(NewsPicksパブリッシング)がある。
日本の人事部「HRアワード2020」書籍部門最優秀賞受賞(『他者と働く』)。2007年度経営学史学会賞(論文部門奨励賞)受賞。