他者は、私とは違う現実を見ている存在
慢性疾患に対し、日常的なセルフケアの変革を重ねていくのは、なんともノロノロしていると思われるかもしれません。
しかし考えてみてください。
そもそも、日本の企業社会は一気に暗くなったのではなく、大小様々な出来事を経験しながら、徐々に暗さを増してきているのです。長い時間をかけて悪化してきたのですから、長い時間をかけなければなかなかよくなることはない。だから、少しずつ変革的な対話を重ねることで、明るさを増していく方向に舵(かじ)を切っていくしかないのです。
時代は大きく変わっているように見えます。しかし、焦りは禁物です。
大小様々な問題が日々起きますが、その一つひとつに、着実な変革への糸口が「問題」として隠されています。
私たちはその問題を大切にしながら、一歩ずつ着実に、変革を進めて行く必要があります。飛び道具はないのですが、私たちには他者というやっかいな、しかし、とても大切な存在がいます。
他者は、私とは違う現実を見ている存在です。そのため、自分では気づけないことも、案外簡単に気づいて指摘してくれます。
互いに異なる視点から物事を考えるとき、新たな一歩が見出せるのではないでしょうか。
それは小さな一歩にすぎないかもしれませんが、確かな一歩なのです。
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経営学者/埼玉大学 経済経営系大学院 准教授
1977年、東京都生まれ。2000年、立教大学経済学部卒業。2002年、同大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。2006年、明治大学大学院経営学研究科博士後期課程単位取得。
2006年、早稲田大学アジア太平洋研究センター助手。2007年、長崎大学経済学部講師・准教授。2010年、西南学院大学商学部准教授を経て、2016年より埼玉大学大学院人文社会科学研究科(通称:経済経営系大学院)准教授。
専門は、経営戦略論、組織論。ナラティヴ・アプローチに基づいた企業変革、イノベーション推進、戦略開発の研究を行っている。また、大手製造業やスタートアップ企業のイノベーション推進や企業変革のアドバイザーとして、その実践を支援している。著書に『他者と働く――「わかりあえなさ」から始める組織論』(NewsPicksパブリッシング)がある。
日本の人事部「HRアワード2020」書籍部門最優秀賞受賞(『他者と働く』)。2007年度経営学史学会賞(論文部門奨励賞)受賞。