「それでも書く」をキーワードに、
とりあえず10年続けたい

──それだけ真剣に取り組んでいたら、寝る時間もないんじゃないか、と思うのですが……。でも、さらに驚くべきことに、通常のお仕事以外に、noteを2015年から毎日、更新されていますよね。

古賀:そうですね。いま1500本を超えています。

──継続できている理由は何だと思いますか?

古賀:うーん、なんでしょうね。やめるとしたら、きれいにやめたいんです。エヴァンゲリオンみたいに、テレビシリーズがあって、劇場版があって、新劇場版があって、というように、自分のなかで「終わった」と思えるまでは続けたい。1年やったらとか5年やったらとか、区切りをつけようと思えばつけられるんですけど、まだ「書いた」っていえないな、という気持ちがあって、ずるずる続けています。

──いや、5年も続けているのに、「まだ書いたと言えない」ってすごいですね。

古賀:うん、あんまり公言したくはないけど、とりあえず10年やってみたいな、という気持ちがあるんです。昔、「ほぼ日」のなかで思想家の吉本隆明さんが「どんな仕事でも、10年間休まずに続けたら、必ずいっちょまえになれる」とおっしゃっていて。だから、それを自分で実感するためにも、10年間というのをひとつの区切りにしようかな、とは思っています。

──ある種、時間をかけた実験のようなものをしている、ということでしょうか。

古賀:そうですね。そもそもnoteを書きはじめたきっかけは、糸井重里さんに会いにいく方便だったんです。糸井さんが「ほぼ日」のなかで毎日「今日のダーリン」というエッセイを書いているから、「ぼくも1年間毎日やりましたが、たった1年でこんなに苦しかったです。糸井さんが20年も続けられているのは、なぜでしょうか?」という話のとっかかりをつくるために、1年やってみたんです。

それで実際に1年noteを続けて、糸井さんに会いに行って、受け入れてもらえて、当初の考えからすると、そこで更新やめてもいい。だけど、いまでも糸井さんと交流がありますからね。糸井さんに堂々と会いにいくためには、やっぱり続けている必要がある。糸井さんはいまでも毎日書かれていますしね。

ぼくもせめて10年経ったら「何かわかったことがある」と言えるのかもしれないし。いまの段階でやめても、「5年、6年やってこうでした」と言えることは何もないので。

──noteを毎日書くことが、仕事においていいリズムになっているとか、そういうことは……。

古賀:ぜんぜんなってないですよ(笑)。雑な場にしないようには心がけていますし、それなりに時間かかるんですよね。書く前も、書いた後も、頭の切り替えが必要なので、1日あたり合計2時間くらいはロスするんです。あのnoteをやめられたらなんてラクだろうって毎日思ってますよ(笑)。

──ええっ!

古賀:だって、仕事をするうえでは邪魔だもん(笑)。ただ、そんなときに思い出したい言葉があるとしたら、「それでも、書く」ですよね。この5、6年だけでも公私それぞれに大変な日もあって、「今日も書くの、おれ?」と思うこともたくさんあったんですけど。「それでも、書く」のひと言で続けていけば、何かが見えるのかもしれないと思って。

──なにか、仕事に生きているとか、効果は?

古賀:いまのところは何の効果もないです(笑)。書くのが楽しくなったとか、文章がうまくなったとか、あらたな自分を発見したとか、何もない。申し訳ないくらいに何もない(笑)。noteの人たちには悪いですけど。

自分の仕事を蔑んだまま
仕事をしたくない

──ライターの仕事にせよ、noteにせよ、なぜ、そこまでストイックに仕事と向き合えるのだと思いますか。

古賀:ぼくは、自分の仕事に誇りを持ちたいんです。自分の仕事を蔑んだまま、生きていたくない。もしぼくがライターではなく、たとえばカスタネットの営業についていたとしても同じで、自分の仕事に誇りを持つためにいろいろ考えると思います。カスタネットが児童教育に果たしている役割とか、打楽器の原点としてのカスタネットとか、カスタネットこそが最強の情操教育楽器なのだ! とか、わからないけど(笑)。自分の仕事に誇りを持つためのロジックを何かしら考えるはずです。

──ああ、誇りを持つためのロジック。

古賀:あとは、やっぱり文章自体、ずっと残るものですから。とくに紙の本で印刷されると、一回印刷されたら取り返しがつかないでしょう。だから、印刷されるぎりぎりまで全精力を傾けたい。自分の実力がなくて70点の原稿になるんだったらしょうがないけど、実力が発揮できなくて、つまりサボったせいで65点になったんだとしたら、猛烈な後悔におそわれてしまいますからね。

とにかく、サボりの余地を少しでも埋めたいんです。自分で自分のことを嫌いになりたくない。それが理由だと思います。

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第2回目 「バズらせること」と「読者を騙すこと」の曖昧な境界線
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